賃貸マンション設計のプロセス 1〜高い賃料・高い入居率のプロジェクト〜|東京の建築設計事務所

前回は「坪単価の合理化目指す設計〜共用空間や階段にデザインのテーマ・コスト削減への姿勢・賃貸マンションの利回りと工事費〜|東京の建築設計」の話でした。

目次

賃貸マンションの建築費

石神井公園の集合住宅:外観(新建築紀行)

今回は「石神井公園の集合住宅」の設計・監理をご依頼いただいた初期の頃の話です。

小規模のマンション・アパートならば、数千万円から1億円を少し超える程度の建築費がかかります。

中規模の鉄筋コンクリート造のマンションは、およそ3億円から4億円程度の建築費が相場となります。

原油価格、企業・消費者物価(日本政策投資銀行)

最近は、世界的なインフレ傾向により、日本国内の建築費が高騰しています。

そのため、ここ2年ほどで、鉄筋コンクリート造の建築費の相場が10%〜20%程度アップしました。

石神井公園の集合住宅を建築したのは、2012年のことなので、現在とはだいぶコスト感が変わります。

インフレ傾向になり、食料・生活必需品・電気などのインフラのコストが明確にアップしました。

石神井公園の集合住宅:計画地(新建築紀行)

一方で、なかなか賃貸マンションなどの賃料アップには至らない傾向があります。

そのため、工事費高騰後は、賃貸マンション・集合住宅建築のハードルが高くなったのが現実です。

賃貸マンション新築の夢と資金計画

石神井公園の集合住宅:計画地(新建築紀行)

工事費の相場・目安が大きく変わりましたが、数億円の建築費・工事費がかかりプロジェクト。

多くの場合は、建主が銀行から建築資金等を借入して、プロジェクトを進行させます。

4階建て〜8階建てくらいの中規模の賃貸マンションの建築は、夢のあるプロジェクトです。

数多くの方々が「集まって住む」ための建築であり、非常にやりがいを感じます。

私たち、建築家・設計者にとって、非常にやりがいのある仕事。

そして、建主にとっても夢のあるプロジェクト。

一方で、数億円の借金を建主は追うことになります。

巨額の借金を考える時、

やりがいと共に、
大変な責任を感じます。

「1にロケーション、2にロケーション、3にロケーション・・・」と言われる不動産。

賃貸マンションの計画においては、「計画地のロケーション」の影響は非常に大きいです。

この「計画地のロケーション」は、与条件となりますが、

予算の範囲内で、
出来るだけデザイン性・価値の高い建築を目指します。

「デザイン性が高い」建築を目標とするのは当然ですが、より「経済性」や「建築の価値」を意識します。

高い賃料と高い入居率の両立を目指す設計

この建築の設計を依頼された経緯。

それは、建主が親しくしていた不動産会社のご紹介でした。

杉並の集合住宅:外観

まだ「駆け出し」の頃に、賃貸マンションのデザイン案を提出しました。

私たちとしては「自信作」でした。

初めての大規模建築のデザインだったこともあり、模型を持って行って建主に提案した時、

住戸プランの多様性が、
建築の外観に表出した、独特のデザインです。

非常に力を入れて、提案したことを「昨日のこと」のように覚えています。

そして、その建築のマネージメントをしていた若い不動産会社M社の社長から、

面白いことを
考えるね。

と高く評価していただき、そのデザイン案が採用となりました。

そして、建築が完成した後、M社の社長から

賃料を
相場の5~10%高く設定したけど・・・

すぐ
満室になったよ!

という有り難い連絡がありました。

「ロケーション最優先」の賃貸マンションでは、一定以上のロケーションで新築であれば、即満室は当然です。

ここで、価値があったことは「賃料を相場の5~10%高く設定」でした。

杉並の集合住宅:住まいとテラス

利回りも高くなり、
建主が喜んでいる!

とのことで、大変嬉しいことでした。

新築時は良い賃貸マンションですが、築年数が経過すると「賃料下落」の波が押し寄せます。

「杉並の集合住宅」では、築3年以上経過し、入居者の入れ替わりがあった際、

人気があるから、
賃料をさらに5%ほど上げた・・・

それでも、
入居するから、とても良いデザインだ!

3年といえども、築年数が経過して「賃料を上げても入居する」ことに、喜んでいただいたM社の社長。

そのM社の社長から、

石神井公園の近くで、
賃貸マンションを新築するプロジェクトがある・・・

御社に
設計・監理をお任せしたい!

という、有り難いご紹介を頂きました。

杉並の集合住宅のように、
デザイン性だけでなく・・・

経済性も
高めて頂きたい!

はいっ!
お任せください!

こうして、石神井公園の集合住宅のプロジェクトが開始したのです。

新建築紀行

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