新築賃貸マンション設計のアイデア〜建築コストを強く意識した設計・急上昇した工事費:強いインフレ傾向と工事費の増加・利回りアップの具体的アイデア〜|東京の建築設計

前回は「デザインとコストダウンのアイデア 7〜造作キッチン 1〜」の話でした。

蚕糸の森アパートメント:共用階段から臨む公園
目次

急上昇した工事費:強いインフレ傾向と工事費の増加

消費者物価上昇率(日本政策投資銀行)

2021年頃から、建築業界では工事費が急に上昇しました。

世界的に強いインフレが進んでおりますが、日本もインフレ傾向が強くなってきています。

1970年〜80年台の高度成長期に匹敵する消費者物価上昇率となっています。

原油価格、企業・消費者物価(日本政策投資銀行)

デフレ傾向にあった日本ですが、2021年初頭から原油価格が急上昇しました。

それに釣られるように消費者物価・企業物価共に上昇しました。

特に企業物価の急上昇は非常に強く、2021年中盤以降で、前年比150%を超えました。

さらに、その後も上昇を続け、2022年以降は前年比200%を超え、250%近くになっています。

つまり、企業物価としては「前年に100万円だったモノが今年は250万円」ということです。

この影響を建築業界も受け、建築コストは急速に上昇しています。

鉄筋、コンクリート、設備機器や建築工事に付随するすべてのコストが急上昇しました。

新築賃貸マンション設計のアイデア:建築コストを強く意識した設計

基礎配筋工事:石神井公園の集合住宅(copyright : YDS Architects)

建築設計の際には、様々な要素を加味しながら進めてゆきます。

建主の要望・スケジュール・法規・デザイン性・コストなどを検討しますが、コストは最重要となります。

来年、
4月から設備機器の卸値が30%ほど上がります。

弊社にも、設備機器メーカーの方から、大幅なコストアップの連絡が来ております。

設備機器・材料等の10%程度のコストアップでも、建築費に大きな影響が出ます。

それが「30%の卸値のアップ」となると、大変な影響です。

これだけ大幅に
コストが上がると、大変だ・・・

どんな建築でも、坪単価などで「およその建築費」をしっかりと把握しながら設計を進めることが大事です。

2020年頃までの「だいたいの坪単価」が、大きく変わりました。

例えば、鉄筋コンクリートの集合住宅では、坪単価が10~20%程度上昇しました。

多くは材料・機器類のコスト上昇がありますが、インフレ傾向に合わせて人件費も高騰しつつあると考えます。

誰しも「コストアップ」は困りますが、最も影響が大きいのは賃貸マンションの建築です。

利回りアップの具体的アイデア

石神井公園の集合住宅:中庭

多くの建主が「銀行から必要資金を借入して、所有する土地に賃貸マンションを建築」します。

私たちは、これまで様々なマンション(集合住宅)を設計・監理させて頂きました。

建築費アップは「賃貸マンション建築」のスキームに重大な影響を与えています。

「利回り」によって、「建築を通して経済活動を行う」とも言える賃貸マンション事業。

分譲マンションもまた、「建築を通して経済活動を行う」面がありますが、賃貸は息が長いモデルです。

大抵は、30〜35年ほどのローンを組んで銀行から借入れます。

建主の持つ「自己資金」にもよりますが、これまでは低金利で工事費も安定していました。

それが「金利が変動する可能性」が出てきた上に、工事費の大幅な上昇となり、大きな局面変化となりました。

基本的には「利回り=想定賃料/工事費」で考えます。

新建築紀行
石神井公園の集合住宅:外観(新建築紀行)

分母の「工事費」に設計監理費、保険料など様々な経費を含む場合もあります。

いずれにしても、利回りがある程度確保されなければ銀行融資が降りず、事業が進まないのが現実です。

合理的設計によって「デザイン性を確保しながらも工事費を抑制する」ことが、最重要です。

一方で、賃料は「相場」があるため、大きくは上げられないことが多いです。

そこにおいても、「デザインによって人気を出して、賃料を少しアップする」考え方ができます。

先日、弊社が設計したマンションの不動産管理会社の方と話をしました。

御社が設計した
あのマンションは人気があって・・・

築10年になりますが、賃料を
5%ほど上げても入り続けています。

それは
とても嬉しいことです。

「5%賃料アップ」出来たら、大きな経済効果があります。

経済面でも大きな貢献ができるように、デザインを工夫し続けてゆきたいと思います。

新建築紀行

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