前回は「戸建住宅の工事現場のプロセス:白い箱のデザインとシンプルな庇〜薄い特注スチール庇・外壁工事〜」の話でした。
準耐火建築の階段
外装工事と並行して、内装工事が進んでゆきます。
今回は、階段工事の話です。
リビングの一角の大きな吹き抜けに、木製の階段を配置しました。
豊島の家は、豊島区の不燃化推進政策のため、準耐火建築としました。
耐火建築ではなく「準」耐火建築ですが、「準」でも木造建築にとっては、かなり高いハードルです。
もともと燃えやすい木造建築。
木造建築を準耐火建築にする
ためには、様々な法令に適合させる必要があります。
鉄筋コンクリート造であれば、自動的に「耐火建築」となります。
準耐火建築物とするためには、床・外壁・天井などの材料に規制がかかります。
そのため、通常の木造建築とは大きく異なる材料を使います。
そして、階段もまた「石膏ボードで覆う」などの規定があります。
階段を木材だけで作るためには、厚さを60mm以上にする必要があります。
60mm以上の厚みがあれば、燃え切るまでにかなりの時間を要します。
そして、「万一、火災の際に燃えても、ある程度燃え残るので避難できる」という考え方です。
建築基準法を活かした骨太なデザイン:60mmの厚さの木製階段
豊島の家では、この「木材ならば厚くしなければならない」法規を利用しました。
法規の要請を利用して、
分厚い大きな跳ね出し階段にしました。
跳ね出し階段は、練馬の家でも作りました。(上記リンク)
練馬の家では、厚み36mmの木材を使いました。
今回は60mmもあるので、跳ね出し部分を大きくしました。
大きく跳ね出すダイナミックな階段のイメージです。
分厚い木材をプレカット工場で作成して、大工さんたちが慎重に工事します。
練馬の家でも苦労しましたが、跳ね出し階段をつくるのは結構難しいです。(上記リンク)
階段を上り下りする際に、70〜80kgくらいの人の体重が跳ね出し部分の一点にかかる時があります。
この時、跳ね出し部分の一点にかかる集中荷重を、反対側でしっかり踏ん張る必要があります。
そして、階段の板が安定するようにします。
てこの原理で、大きなモーメントがかかるので、反対側の階段の根本は頑丈に作る必要があります。
この時は、工務店の棟梁と事前に図面でしっかり打ち合わせして、壁の内部に木材を設置しました。
桁を外壁内に埋め込んで、
しっかりした構造を作りました。
この時、外壁にも準耐火建築の規定がかかるので、その規定に適合するように慎重に検討しました。
かなり「設計の自由度が低い」状況の中、しっかりした階段が出来て嬉しく思いました。
次回は上記リンクです。
竣工写真は、下記サイトをご覧下さい。