前回は「商業施設の新築設計・デザイン 2〜デザインコンセプト・簡単な模型やCGで屋根勾配をシミュレーション・木の柱と梁のデザインが際立った空間・周辺環境に馴染む景観〜」の話でした。
九州の新築オフィスビル計画のプロセス:依頼と賃貸のスキーム
こんにちは。
今回は、現在進行中のオフィスビルの設計についてご紹介します。
建主から連絡を頂きました。
今の職場を移転するので、
ビルの新築設計をお願いします。
承知致しました。
どのようなご要望をお持ちですか?
1階に打ち合わせ室と
車3台分の駐車場が欲しいです。
2階に当社の事務室を配置して、
3階から上は当社が使用するか、賃貸にするか検討したいです。
賃貸のスキームも
合わせて検討します。
早速、法規制を調べて、設計案を検討します。
今回、重要なポイントに「建物の賃貸部分をどのように考えるのか」があります。
当社が必要な面積は、
〜坪程度です・・・
依頼主の会社が必要な面積を計画した上で、それを上回る部分を「賃貸に回すのが良いかどうか」を考えます。
これは設計だけではなく、建設コストの借入と返済のスキームに大きな影響を与えます。
建主にとっては、建築にかかる総コストは非常に大きな問題なので、
建築コストや借入の方針は
出来るだけ有利にするように工夫します。
設計する際には、アイデアを込めた特徴的なデザインにすると同時に、合理的設計によってコストを下げます。
また、賃貸マンションを設計する際には、建主が居住する場合が多いですが、
出来るだけ
大きなボリュームを設計してください・・・
という要望を建主・不動産会社から受けることが多いです。
この「最大限のボリューム」に対して、今回は「賃貸部分の建物を計画・建築する方が良いのか」も含めて検討しました。
計画地の状況の把握とボリュームスタディ
場所は県庁所在地の地方都市です。
2つの大通り沿いに面した角地であることが、大きな特徴です。
車の動線を考えると、
車の旋回スペースが車道側になります。
建物の配置は、
敷地の奥側にまとめます。
まずは、
ボリュームを検討しよう。
どんな建築設計においても、計画地の状況の把握は大事です。
個人邸などでは、前面道路の状況は似ている面がありますが、オフィスビル・マンションなどでは大きく異なります。
今回は、二面に道路接道する角地であることが、大きなポイントです。
デザインのイメージは「白い外壁と打放しの壁からなる建築で、角地で目立つデザイン」です。
建築のデザインが、依頼主の会社の
ミッションを具現化するイメージです。
角地という状況を活かして「ただ目立つ」のではなく、その会社のミッションや雰囲気を発信する建築です。
ボリュームはシンプルな白い箱から、角地の部分を削ったデザインです。
階段・エレベーターなどの共用部をコンパクトにまとめて、構造・設備計画をシンプルにしました。
合理的な設計によって、建築コストはある程度抑えれる見込みです。
この計画なら、
一部を賃貸に回した方が事業性が高まるな・・・
設計・デザインによって、建物の事業性を高めることが出来そうです。
建主への提案:ミッションの発信と高い事業性
オフィスビルらしく、ガラス張りの明るい雰囲気です。
解放感と高級感を生み出します。
コンクリート打放しの壁は、デザインのポイントでありアクセントです。
さらに、この大きな壁は構造要素としても重要な壁になります。
街との関係を考慮するために、計画地周辺も模型を作成して検討します。
デザインを作成し、建主に提案します。
RC造の4階建てで
設計しています。
通りから見える打放しの壁が印象的で、
通る人の目を引くデザインです。
おしゃれなオフィスビルに
なりそうで、良いですね!
会社のミッションや雰囲気を
具現化しています。
あのおしゃれなビルね、と様々な方から
認識してもらえるデザインを考えました。
それは
重要なことですね。
当社のブランドイメージにも
つながりそうです。
御社のイメージが
建築に表れるように考えました。
そして、懸案の「賃貸部分の建物」に関して説明を続けました。
共用部や設備計画を
シンプルに合理的に設計したので・・・
賃貸の方にも使いやすく、
事業性は大きく向上すると考えます。
デザインが良く、
事業性がアップするなら何よりです!
このデザインで、
如何でしょうか?
このデザインが
気に入りました。
それではこちらの案で
進めていきます。
こうして、基本計画が決定し、設計を詰めてゆくことになりました。