前回は「建物の耐震性を高めるポイント〜ガズィアンテプ地震(トルコ・シリア地震)の被害・地震のメカニズム〜」の話でした。
ガズィアンテプ地震(トルコ・シリア地震)における建物の倒壊
非常に甚大な被害が出ているガズィアンテプ地震(トルコ・シリア地震)。
トルコ・シリアなどの国民の方々や被災された方々・関係者の方々には、お見舞いを申し上げます。
鉄筋コンクリートの大規模な建物が、下層崩壊しています。
中には、比較的最近の2018年の建築法規改正後建築の鉄筋コンクリート造マンションが二つに割れた建物もあります。
下層崩壊・ピロティ崩壊は、我が国の阪神淡路大震災でも多く見受けられました。
上層の重量を支える下層には、日頃から大きな力がかかります。
さらに地震の際には、大きな地震力がかかるため、倒壊に至りやすいのが原因です。
阪神淡路大震災では、建物の中層(中程度の階)の崩壊も多数見受けられました。
私たちは個人邸から集合住宅・施設に至るまで、構造設計を綿密に検討しています。
個人邸などでは、耐震等級をとることをお勧めしております。
耐震等級を取得する場合、建築基準法の基準よりも耐震性を高める必要があります。
耐震等級を取得する場合以外でも、
地震力を少し割り増しして
「耐震性の高い」建築を設計しています。
このように、耐震性に関しては「建築基準法で定められた最低限のライン」を超える視点が大事です。
建物の重量によって大きく変わる地震力
耐震性は建物全体で考えるので、主要構造物である柱・梁などの総合的な耐震性を考えます。
その際には、それら主要構造物の耐震性のバランスが非常に大事です。
バランスと同時に、地震力を受ける基礎の設計に大きな配慮をしています。
地面が揺れて、加速度が建物に伝わって、その加速度が地震力となって建物を揺らします。
その際に、建物が地面と繋がっている部分=基礎は非常に重要です。
基礎は地盤によっては、その下部に杭を設置することもあります。
地面からの揺れを受け止める基礎は、基礎梁という大きな梁を配置します。
そして、地面にドッシリと乗っかって、建物を地面の上で支えます。
建物と同じ形状の平たい耐圧盤が、
下部の地面にドッシリと乗るので安定します。
耐震性の高い建築:頑強な耐圧盤と基礎の一体化
大きな基礎梁が地面に食い込むように配置され、基礎梁は硬い地盤の上に乗っかります。
中層の集合住宅などの建物を設計する際には、基礎梁の下部をベタ基礎のように一体化するように設計しています。
蚕糸の森アパートメントでも、基礎梁の下部を厚いコンクリートの板としました。
基礎梁の下の地下スラブは、大きな基礎梁を配置すれば構造的には安定します。
今回は、地震の際に「建物の底面全体で地震を受ける」ように考えました。
そこで、構造設計者に基礎梁底面に大きなスラブ(コンクリートの板)を設置して設計して頂きました。
この構造形式の場合、単純に基礎梁を設置する場合よりコストアップとなります。
「設置しなくても良いコンクリート面を設置する」ためにコストがかかるためです。
コストがかかりますが、耐震性が大きく上がります。
また、ピットの配管などのメンテナンス性能も向上します。
長い目でみた時に、建物にとっては非常に大きなメリットとなります。
しっかりした耐圧盤によって、
耐震性が大きく向上します。
コストと建築の性能をしっかりと検討し、合理性の高い設計を心がけています。