建物の耐震性を高めるポイント〜ガズィアンテプ地震(トルコ・シリア地震)の被害・地震のメカニズム〜|耐震性と建築設計1・東京の建築設計

前回は「デザインとコストダウンのアイデア〜合理的設計による建築費のコストダウン・地震と建物・建物にかかる地震力〜」の話でした。

目次

ガズィアンテプ地震(トルコ・シリア地震)の被害

2023年ガズィアンテプ地震(トルコ・シリア地震, Wikipedia)

2023年2月6日にトルコ・シリアで発生したガズィアンテプ地震。

非常に大きな被害が出ております。

トルコ・シリアなどの国民の方々や被災された方々・関係者の方々には、お見舞いを申し上げます。

人口
トルコ約84,340,000人
シリア約17,500,000人
トルコ・シリアの人口(Worldometer)

トルコ・シリアで合計1億200万人程度の方がいらっしゃいます。

日本の人口:約1億2600万人よりも少ないですが、東日本大震災を超える死者が出ています。

現時点で判明しているだけで、死者が28,000人を超える大惨事となっています。

マグニチュードは7.8で、東日本大震災の9.0 よりは小さいですが、広範囲に大規模な被害が発生しています。

つい5年前の2018年に大規模な建築法規の改正があったトルコ。

改正以降に建築された比較的新たなマンション(集合住宅)が大きな被害を受けて倒壊しています。

写真を見ると、建物の半分以上が真っ二つに割れて倒壊している状況が分かります。

地震のメカニズム

地震のメカニズム(新建築紀行)

地震は地震波が建物に伝わって被害が発生します。

地震波は非常に複雑ですが、単純化して考えると、地震波によって建物を倒す方向に力がかかります。

地震のメカニズム(新建築紀行)

そして、その力Fは運動方程式によってF=maとなります。

地震のメカニズム(新建築紀行)

地震波から発生する加速度は、波動なので複雑な解析が必要となります。

地震のメカニズム(新建築紀行)

ここで大事なことは「建物にかかる力は、建物の重量に比例する」ことです。

建物や構造体の重量が大きい場合は「その重量に応じた地震力が発生する」のです。

そのため、頑強さのみならず、主要構造部等の重量を大きくしすぎないことも大事です。

建物の耐震性を高めるポイント

新建築紀行
阪神淡路大震災(Wikipedia)

ガズィアンテプ地震(トルコ・シリア地震)の被害の実態は、これから詳細な調査によって解明されてゆくでしょう。

部分的な情報によりますが、建築の被害の状況と原因を考えてみます。

比較的新しい建築基準で建築されたマンション(集合住宅)が「二つに割れて、倒壊」した原因。

最も大きな理由は、「建物のバランスが良くなかった」と考えます。

建物の耐震性を高めるポイントはいくつかありますが、下記の通りになります。

耐震性を高めるポイント

1.柱・梁・基礎などの主要構造物が頑強であること。

2.主要構造物の重量が大きくならずに、適度な重量で必要な耐震性を持つこと。

3.耐震性の高い要素:柱・梁をバランス良く、合理的に配置すること。

「主体構造が頑強であること」が最も大事ですが、上のメカニズムの考え方により、「適度な重量である」ことも大事です。

そして、それらの「耐震要素がバランス良く配置されている」ことも非常に大事です。

鉄筋コンクリートや鉄骨による構造の大規模な建物が、二つに割れて倒壊したのは「バランスの欠如」が大きな理由です。

また、阪神淡路大震災で多くみられた、「下層部の倒壊」が比較的目立ちます。

これは、下層階や基礎部分の耐震性が少し不足していたことが理由であると考えます。

大震災
1923関東大震災
1995阪神淡路大震災
2011東日本大震災
日本の大震災

日本では1995年、2011年と続けて大震災が発生しました。

建築設計に関わるものとして、これからも耐震性に十分な配慮をして、合理的で美しい建築を作ってゆきたく思います。

新建築紀行

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