前回は「九州の新築オフィスビル計画のプロセス〜依頼と賃貸のスキーム・計画地の状況の把握とボリュームスタディ・建主への提案・ミッションの発信と高い事業性〜」の話でした。
新築オフィスビルのコンセプト:都市と街からの印象とブランディング
こんにちは。
打放しのコンクリートの大きな壁が際立つデザインを考えました。
十字路の角地に建つオフィスビルなので、
街・都市との関係性が非常に大事です。
住宅でも集合住宅でもオフィスビルでも、都市や街に建てる以上、
その規模によらず、
都市との関係性は重要です。
いつも「都市と建築の関係は重要」ですが、計画地の状況によって、
「建築と都市の関係性」の
重要性は変化します。
街道・幹線道路に面する”Forests of Grids”では、「都市・街に働きかけるデザイン」を考えました。
建築ないの自然・樹木が「都市・街からも見える」コンセプトです。
そして、「建築と都市と自然が共に成長してゆく」イメージで設計しました。
このオフィスビルは“Urban Wall”というコンセプトで、街からの印象が際立つように考えました。
大きな道路の交差点に位置する計画地。
周辺には高い建物が立ち並びますが、容積率を最大限にして、高さを抑えました。
街を歩く人たちが、
空を臨めるイメージです。
「大きな建物をつくること」も大事かもしれませんが、
都市との関係を考えるとき、
建築のボリュームは小さくしたいです。
できるだけコンパクトに設計して、オフィスのブランディングにも貢献するデザインを考えました。
自然の光とオフィスビル
この壁は外壁側だけではなく、室内からも印象的な壁となるデザインを検討しています。
壁の両サイドに
スリット窓を入れよう。
室内側に光が
差し込むイメージにしよう。
オフィスビルに自然の光りが「差し込む」空間のイメージを考えました。
人工照明によって「均一な明るさ」を求められることが多いオフィスビル。
照明計画は「均一な明るさ」になるようにしますが、「自然のうつろい」が感じられる空間です。
練馬の家などで「スリットの光」をデザインしました。(上記リンク)
このスリットの
光はオフィスの空間を特徴づけますね。
美しい自然光で、
内部からも壁の存在感が際立ちますね。
打放し壁の両側に、細長い窓をつくり、そこから光が差し込み壁を照らす、というデザイン案です。
また、このコンクリート打ち放しの壁を斜めにしている事にも意味があります。
この壁自体に、壁柱のような構造要素があります。
一般的な真四角の柱ではなく、「長方形の細長い柱」と構造的に考えます。
コンクリート打ち放し壁を斜めにすることで、縦軸横軸ともに支える力を発揮します。
デザイン性を高めるといだけではなく、合理的な考えに基づいて設計しています。
設備のコア:合理的でメンテナンス性の高い設備計画
さらに、設備設計も重視して、合理的でメンテナンスに配慮しました。
室外機を設置するバルコニー(サービスバルコニー)などは目立たない位置へまとめています。
エアコンの室外機を置く位置
ってそんなに重要なの?
「エアコンなどの設備の配置は重要なの」と思う方もいらっしゃると思います。
そのような細かな点にもケアすることで、よりデザイン性も高まります。
なるべく人目につかなく、メンテナンスのし易い場所を検討したり、
ルーバーなどで覆っておしゃれに
隠すといった方法など、様々です。
それぞれのプロジェクトによって、それぞれの工夫が出来ます。
そういう事にまで、
こだわっているとは知らなかった・・・
後で、こんなおしゃれな方法が
あったんだって知ることもあります。
このように思われる方のためにも、私たちは自信をもって納得いただける設計しています。
構造設計で「コアをつくる」考え方がありますが、ここでは「設備のコア」を考えました。
共用廊下・階段・エレベーターなどの空間と設備コアをまとめて、構造・設備に合理性をもたらしました。
上下階の配管を
集約して、設備ルートを合理化しました。
シンプルさを突き詰めた構造と設備計画です。
そして、それらが全体のデザインコンセプトやデザインそのものと組み合わさりました。
このデザインは
いいですね。
この案で
設計を進めてください。
建主から了解を頂き、オフィスビルの設計案が概ね決定しました。
構造事務所と共に構造設計の詳細を検討し、施工費の見積に向けて詳細設計・実施設計を進めてゆきます。
次回は上記リンクです。