前回は「マンションの工事のプロセス〜杭と地盤改良の合理的比較・設計図書の構造性能のチェックと試験杭・鉄筋コンクリート造の高い耐火性能・壁式構造とラーメン構造〜|石神井公園の集合住宅4・東京の建築設計」の話でした。
地盤面下を掘削する根切工事:マンション工事のプロセス
地盤改良が無事に完成し、いよいよ基礎工事に入ります。
基礎工事でまず最初に行う工事は、根切工事です。
根切工事は「基礎をつくる際に地盤面下を掘削して、基礎やピットのための空間を造ること」です。
根切という言葉は、文字通り「根を切る」という意味から生まれた言葉です。
基礎梁も含め、梁は基本的に縦長の形状をしています。
縦長の方が、梁にかかる力に
有利に働きます。
特に、建物を支える基礎は非常に垂直方向に大きく、縦長になる傾向があります。
そのため、1階のスラブから基礎下端までは上下で「屈んで人が入れる」くらいの空間があります。
樹木や植物の根を切ってしまうように、「土を切る」という意味で、どんどん土を掘ってゆきます。
根切の言葉の由来:織田信長の天下統一戦
戦国時代は、文字通り「戦争が絶え間なく発生した」時代です。
戦国大名の中でも、最も苛烈であった織田信長。
敵対する宗教勢力の一向宗門徒に対して、
やつらを
根切にせよ!
と家臣団に命令を下しました。
信長の天下統一戦において、熾烈な戦いが繰り広げられ、畿内を中心に「根切」が行われました。
こういう歴史もあるため、少し過激なイメージのある「根切」です。
一方で、この「根切」は建築工事において非常に大事です。
まずは、基礎を作る空間をしっかり作るために、建物の配置に合わせて掘削します。
そして、根切工事を進めてゆきます。
だいぶ根切工事が進んできました。
土に大きな穴が空いて、ここで基礎工事を進めてゆきます。
壁式鉄筋コンクリート造の建物には、地中部分に基礎梁があります。
その基礎梁を受ける位置をしっかりと検討して、基礎梁の周辺をしっかり固めます。
盛り上がっている部分の上部に、大きな建物の重量を支える基礎梁が配置されることになります。
設備が集中するピット空間:捨てコンクリート打設
ここまで完成したところで、薄いコンクリートの板を作ります。
基礎梁周囲の部分であるピット下周辺を全体的にコンクリートの板で覆います。
「捨てコン」あるいは「捨てコンクリート」と言われます。
「捨てコンクリート」の「捨て」には意味があります。
これは、「構造的には重要ではない」ため「とりあえず工事する」という意味です。
構造的な意味はありませんが、捨てコンクリートをしっかり打つことは大事です。
これで、ピットがしっかりとした空間となります。
そして捨てコンクリートをした上には、通り芯などの工事のために大事な情報を描いてゆきます。
工事現場が
原寸大の図面のようになります。
建物の規模が大きくなるほど、配管・配線などの設備工事の重要性が増してゆきます。
ピットには上水・下水などの配管、電気配線がたくさん入ります。
見えなくなるピットは
設備が集中する大事な部分です。
そして、ここから上の住まいなどに接続されてゆきます。
これで、建物を作ってゆく最も基本的工事が完了しました。
次回は、基礎の配筋工事です。
次回は上記リンクです。
竣工写真は、下記サイトをご覧下さい。