前回は「木の均等グリッドと柔らかな曲面壁面のコンセプトドローイング〜光や風を生み出す有機的ヴォイド〜」の話でした。
6つの「水に浮かぶ箱」による美術館+イノベーションセンター

今回は、人工の池に浮かぶように建つ美術館とイノベーションセンターの複合建築物の話です。
静謐な空間が好まれる美術館においては、水辺の空間によって、外部空間と遮断するデザインが多いです。
また、水面に建築が映える風景を目論むデザインも多く見受けられます。
・揺らめく自然
・有機的ヴォイド
・道空間
・都市広場
・多様なる共生
今回は、揺らめく自然、有機的ヴォイドと道空間をメインコンセプトとして考えました。

美術館とイノベーションセンターの
複合建築物は、一棟で設計することも可能です。



早い段階で、人工池と建築を
複合的にデザインすることを考えましたので・・・



美術館とイノベーションセンターの
ボリュームを、別棟で検討しました。
当初、美術館とイノベーションセンターのボリュームを二つに分けて、要求面積等を検討しました。
設計を進める中で、二つに分けたボリュームをさらに分節する方針に変更しました。
そして、2つのボリュームをセットに考えて、3つのタイプの箱によるボリュームを考えました。
全てで、2×3=6つの箱が並びます。


それぞれの対(ペア)となるボリュームの全体的なデザインを統一することにしました。
そして、鉄筋コンクリート造のボリュームと木造のボリュームを考え、



鉄筋コンクリートのボリュームを
大きな箱にしました。
そして、6つの建築を、コンクリート打ち放しの大きな壁によって連結しました。
「ガラスの箱」と「水の回廊」:展示空間と道空間


6つの箱は、ガラスによって覆われたデザインです。
それらのガラスの箱を、2枚の大きなコンクリート打ち放しの壁でによって、構造的に合体させました。
コンクリート打ち放しの壁面は、構造だけでなく、デザインにおいても大事な要素となります。
すべての「ガラスの箱」を貫通するコンクリート打ち放しの壁は、「ガラスの箱」同士の空間を連結します。


「ガラスの箱」同士を移動する際は、このコンクリート打ち放しの壁が生み出す道空間を通ります。
すべてのボリュームの外壁をガラスにしたのは、周囲の風景を取り込むためです。
さらに、それぞれのボリュームにおいて「水の回廊」を作ることを目論んだからです。


それぞれのボリュームの内部には、展示空間やイノベーションのための空間が用意されています。
主に展示空間は、作品の保管のため、太陽光線を妨げるために、木の壁面で覆われた空間です。
そして、展示空間同士を行き来するために、この「水の回廊」を歩いて行きます。


コンクリート打ち放しの壁面は、「水の回廊」からも眺めることが出来、風景と一体化します。



コンクリート打ち放しの壁面に
大きな開口を開けました。



コンクリートの壁によって
風景を切り取り、借景のようになります。
次回は、夜景の姿などをご紹介します。