鉄筋コンクリート造マンションの地業工事と掘削工事〜人が滞在する地下空間の工事の難しさ・密実なコンクリート打設計画と掘削〜|蚕糸の森アパートメント2・東京の建築設計から

前回は「鉄筋コンクリート造マンションの建築工事現場〜地鎮祭・建築工事の縄張り〜|蚕糸の森アパートメント1・東京の建築設計から」の話でした。

目次

人が滞在する地下空間の工事の難しさ

蚕糸の森アパートメント:夜景(公園側から)(新建築紀行)

非常に広大な公園を目の前にする「恵まれた計画地」に建築することになった「蚕糸の森アパートメント」。

いよいよ、その工事が始まります。

蚕糸の森公園(新建築紀行)

今回は、地業工事の話です。

同様に広大な石神井公園に隣接する集合住宅「石神井公園の集合住宅」には、地下の居住スペースはありませんでした。

石神井公園の集合住宅:基礎工事(新建築紀行)

「蚕糸の森アパートメント」は地下があり、地下空間は倉庫等だけではなく、趣味のための部屋があります。

多くの集合住宅では、地下はドライエリア等の設備・配管スペース、あるいは倉庫となります。

今回は人が滞在する「居住スペース」としての部屋となるため、倉庫等とは異なります。

そのため、かなり入念に計画する必要があります。

短時間といえども、人が滞在して過ごす空間です。

一定レベルの居住性能が、
確保されなければなりません。

入念な地業工事と掘削工事

蚕糸の森アパートメント:掘削工事(新建築紀行)

漏水等は、決して「あってはいけないこと」で、結露なども防がなければなりません。

これらを「密実に打設する、鉄筋コンクリートの性能のみに頼る」ことは理論的には可能です。

一方で、実際の施工としては、かなり高い難易度です。

蚕糸の森アパートメント:掘削工事(新建築紀行)

鉄筋コンクリート造の壁の内側に熱い断熱材を吹き付け、さらに内側にボードを貼って、二重壁をつくる工法もあります。

二重壁の内側が結露しても、表面側には結露を出さないことで、結露対策となります。

ところが、コンクリートを密実に打設することで漏水は防げるとしても、

空気中にも水分があるため、
結露は発生することがあります。

「結露が発生する」ことを前提とし、二重壁の下部に結露水の通り道をつくり、結露水を排出する仕組も考えられます。

密実なコンクリート打設計画と掘削

蚕糸の森アパートメント:断面図(新建築紀行)

地下に二重壁を作るかどうか、
設計段階で、様々検討しました。

その結果、この建築では、大掛かりな二重壁をつくらず、上階と同様の断熱施工とすることにしました。

密実な鉄筋コンクリートをしっかり
打設して、地下の居住空間を確保する計画です。

建設会社である「白石建設」は、鉄筋コンクリート造において、大変優れた技術を持つ会社でした。

この会社は「鉄筋コンクリート建築」において、極めて高い評価を得ている会社です。

その高い施工能力に、
期待したこともあります。

密実な鉄筋コンクリートを打設するために、
地下の掘削工事も高い精度が必要です。

丁寧に
建築工事を進めます!

さて、通常よりもさらに高い精度のコンクリートを打設するためには、完璧な地業工事が必要です。

蚕糸の森アパートメント:掘削工事(新建築紀行)

丁寧に土を掘り、地下のボリュームが作られる部分を確保します。

土を搬出するのはかなりの労力が必要で、現場の方々は大変な苦労です。

私たちが、設計図書で「垂直に基礎を描く」のですが、工事現場の方々にとって、「厳密に垂直に」は難しい面があります。

現場では、どうしても「多少の誤差」は出るものです。

綿密な工事で、
施工誤差は最小にします!

白石建設の皆さんの極めて高い技量に期待して、お任せしました。

そして、設計者として「考えられる設計・計画」を、
現場監督と考えてゆきました。

竣工写真は、下記サイトをご覧下さい。

新建築紀行

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