前回は「「構造のコア」と構造的安定性によるコストダウン〜梁のサイズを出来るだけ揃える合理的設計・木造建築における柱の存在・空間に秩序与える柱〜」の話でした。
デザインコンセプトと建築コスト
木造戸建住宅において、全体のコストの25〜30%程度を占めるのが構造のコストです。
建物の基礎と木造軸組によって、建築全体を支える構造は「建築の要」です。
大小様々なヴォイドを持ち、自然の光や風を呼び込む外部ヴォイドを持つ茨城の家。
明快なコンセプトがある建築は自然の光溢れる空間となり、完成が楽しみになりました。
一方で、これらの内部ヴォイド、外部ヴォイドが貫入したデザインは、コストが上がる懸念が高いです。
デザインのコンセプトを
守りながら、出来るだけコストダウンしたい・・・
デザインや居住性が良くても、あまりに建築コストが高くなるのは避けたいです。
建築コストは、使用する材料・設備機器の影響も大きいですが、人件費も大きな要素になります。
そこで、構造全体を合理化して、コストダウンを検討しました。
構造のシンプル化と工事の費用
建築工事のコストは、設計者にとっても分かりにくい面があります。
設備機器・材料・外装材など「ある程度費用の目安がある項目」があります。
対して、実際には工事の大きな部分を占める人件費は、
この工事は
このくらいの人件費がかかりそうです・・・
様々な項目に人件費が乗った上で、建設会社・ゼネコンは工事見積もりを作成します。
ここは、このくらいの
費用で出来ませんか?
設計者として、建設会社・ゼネコンの担当者と協議して、コストダウンを図ります。
その際には、「デザインを押し通す」だけでなく「合理化した設計」をすることが大事です。
茨城の家では構造のコアを作り、耐震性能を高めるとともに、梁せいを抑える構造計画としました。
構造設計者と協議を進めます。
梁せいを出来るだけ、
均一にしましょう。
シンプルな方が、
コストダウンになりますね。
木造軸組のコストは、大きくは木材の容積・体積である「材積」で決まります。
梁せいを抑えることは、「材積を小さくする」ことにつながり、コストダウンになります。
このコストダウンは、「小さくなる材積」の全体に対する割合としては軽微です。
そのため、大きな影響にはなりません。
工事で大事なことは、材料の質や量に目が行きがちです。
実は「人件費=工事する方々の費用」も大事な要素です。
そこで、構造のシンプル化によって、人件費のコストダウンを検討しました。
梁せいを出来るだけ均一にして、
工事を合理化しよう。
シンプルな方が
工事がしやすくなりますね。
梁せいを出来るだけ均一にすると、
設計も合理化できる。
工事全体の合理化とコストダウンのアイデア
設計の際には、仕上げて作る空間だけでなく、構造と共に配管や配線の設備計画も大事です。
特に木造戸建住宅では、レンジフードなどのダクトの通る経路を考えることが大事です。
梁の大きさが大きすぎると、「ダクトが入らない」ことがあります。
その為、設計でも工事現場でも、構造体をシンプル化することは、
設計者の工事監理が
合理化すると共に・・・
建築現場の工事会社の
監督の工事管理も合理化します。
これらの「工事全体の合理化」をするために、シンプルな構造にすることを目論みました。
コア周囲には
筋交を沢山入れました。
このコアで
頑強に建築を支えます。
こうして、構造設計担当者と少しずつ、様々な調整を行なって合理化してゆきます。
柱・梁などの構造部材のサイズの変更が行われるたびに、図面が送られてきます。
だいぶ梁の大きさが
均一化できてきた。
構造上、「どうしても大きな梁が必要」な部分はあります。
それでも、全体として出来るだけ「梁せいを揃える」ことに成功しました。
今は柱・梁は「プレカット= 工場で機械が製作する」ので、梁の大きさは「入力するだけ」です。
「構造のシンプル化」によって、柱・梁のコストは大きくは下がりません。
一方で、工事を請け負う建設会社としては、シンプルな方が良いのです。
そして、「シンプルで管理しやすい」工事であれば、検討すべき事項も少なくなます。
それらが積もり積もって省力化につながり、コストダウンにつながります。
構造の合理化・シンプル化で、
コストダウンできた。
構造だけでなく、工事全体に対してもコストダウンとなり、大きな合理化が出来ました。
次回は上記リンクです。