前回は「木造建築の合理的設計とコストダウン〜茨城の家の木造軸組・デザイン性高める柱の位置と構造的合理性・広いリビングと少ない柱・有機的ヴォイドと梁〜」の話でした。
木造建築における柱の存在:空間に秩序与える柱
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私たちにとって「最初の作品」である茨城の家。
この時は、3間半x4間半の広い1階のリビングに、「柱を出来るだけ少なくする」ことが求められました。
一般的には、
柱は邪魔だから、
少ない方が良い・・・
と考えられる傾向があります。
![新建築紀行](https://a-voyage.net/wp-content/uploads/2023/11/HO_P723sm01ma.jpg)
個人邸の大規模リノベーションの作品の「大泉学園の家」。
この作品の最も大きなテーマは、「既存の柱を残す」ことを活かしたデザインです。
もともとは、キッチン・浴室・脱衣室・納戸など小さく分けられていた空間を、広くしました。
この時、もともとあった沢山の柱が空間内に登場しますが、それらの柱をデザイン化しました。
場所によっては、「半間おきに柱が露出」する空間ですが、柱が空間にリズムと秩序を与えています。
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柱が空間に
リズム感を与えることを目論みました。
このように、私たちは柱を肯定的に考えますが、
この広いリビングは、
柱を少なくして欲しい・・・
茨城の家では「柱を少なくする」ことが建主の要望でした。
梁のサイズを出来るだけ揃える合理的設計
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木造個人邸の柱の断面は、基本的に3寸5分角か4寸角の二種類です。
そして、柱の高さは断面的デザインにもよりますが、同じ高さの部材が多くなります。
一方で、梁はスパンによって梁の断面サイズが大きく変わり、長さも変わります。
軸組のコストは、基本的には木材の量(材積)で決まります。
梁の大きさを出来るだけ揃えた方が、コストダウンになります。
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梁せいが大きな、力強い梁で支えることも
可能ですが・・・
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特殊なサイズの大型の梁は
少しコストが高くなります。
さらに、最近は集成材の技術が上がり、「強度が高い」集成材によって大スパンを飛ばすことが可能です。
それらの「強度が高い」集成材は、便利ですが、コストがだいぶ上がる傾向があります。
そこで、梁の大きさを出来るだけ揃えて力の流れを分散させると、合理的な設計になります。
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この広いリビングには、どうしてもどこかに柱を建てる必要がありました。
そこで、和室の一角に柱を立てて、デザイン性を高めました。
![新建築紀行](https://a-voyage.net/wp-content/uploads/2022/04/HI03ma.jpg)
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リビングの一角にある小さな和室の角の柱が、空間を柔らかく分節します。
そして、この柱によってさらに安定した構造にしました。
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広いリビングだけど、柱が二本あれば、
比較的梁せい(梁の高さ)が抑えられるはず。
そうですね。これで、梁をある程度
揃えられそうです。
「構造のコア」と構造的安定性によるコストダウン
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これで、少しずつ合理的な構造になってきました。
地震力をうまく受けるには、
構造のコアがあれば良いです。
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構造のコアをつくって、
構造をより合理的にしよう。
「構造のコア」は、主に鉄筋コンクリート造のオフィスビルなどで考える構造的コンセプトです。
「構造のコア」は、柱・梁・壁などを一部に集約して、がっちりした箱を作ることです。
その「がっちりした箱」によって、地震力を大きく負担します。
そして、他の構造が負担する地震力を小さくするのです。
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1階の水回り部分は、小さなスペースに分かれているので、
コアを作りやすいですね。
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この部分を構造のコアに
してください。
今回、1階の浴室・脱衣室・トイレを集約して配置し、付近に収納などを配置していました。
小さな空間なので、本来は構造の柱はそれほど必要ではありません。
この部分にあえて柱をたくさん配置して、筋交による耐震壁も作るようにしました。
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この水回り部分が、ガッシリとした
コアになりそうだ。
構造のコアが決まり、さらに合理的構造になってきました。
![新建築紀行](https://a-voyage.net/wp-content/uploads/2022/04/HI01ma.jpg)
![新建築紀行](https://a-voyage.net/wp-content/uploads/2022/04/HI01ma.jpg)
開口・窓は「開けるところは大きく開けて、閉じるところはしっかり閉じる」デザインです。
そして、外周壁には全面的に構造用合板を貼るので、面で構造をしっかり支えます。
今回、構造のコアを1階に配置したことで、外周とコアで構造をがっちり支えるプランになりました。
これで、全体的に力の流れが分散化されて、構造的に安定化してコストダウンにつながりました。
次回は上記リンクです。