木造建築の合理的設計とコストダウン〜茨城の家の木造軸組・デザイン性高める柱の位置と構造的合理性・広いリビングと少ない柱・有機的ヴォイドと梁〜|コストダウンのアイデア4・東京の建築設計

前回は「木造建築の合理的設計と適切なコスト管理〜材積と建築コスト・シンプルな構造とコストダウン〜」の話でした。

目次

木造建築の合理的設計とコストダウン:茨城の家の木造軸組

茨城の家:軸組模型(新建築紀行)

茨城県の広い敷地に計画された茨城の家。

新建築紀行
茨城の家:縄張り(新建築紀行)

私たちにとって、初めての実作・建築確認申請をした建物です。

慣れれば、特に難しくない建築確認申請や役所への申請協議ですが、

Yoshitaka Uchino

最初は分からないことが
多く、確認検査機関の方に教えてもらいました。

東京などの都市部では、建蔽率など「面積に対する規制」と同時に「高さ規制」は非常に重要です。

この時は、敷地にゆとりがある木造二階建ての建築なので、高さ規制は考える必要がありませんでした。

Yoshitaka Uchino

設計の自由度が
非常に大きい条件でした。

茨城の家:リビング(新建築紀行)

1階のリビングは、3間半x4間半の空間です。

木造個人邸の感覚では、「かなり広い」です。

このリビングには、できるだけ柱を少なくしたいと思いました。

新建築紀行
Villa-M(新建築紀行)

木造建築における柱は象徴的で、グリッドのデザインなどは好きです。

一方で、一般的には「柱は少ない方が良い」という認識があり、建主から、

依頼者

出来るだけ
リビングは柱が少ない方が良いです。

「柱は少なく」と言う希望があったので、広い空間の柱は少なめにする設計と心がけました。

広いリビングと少ない柱:有機的ヴォイドと梁

新建築紀行
茨城の家:軸組模型(新建築紀行)

個人住宅のサイズで「3間半x4間半の空間」は、平屋であれば柱をなくすことも出来ます。

一方で、2階建てで、2階に部屋がある場合は「2階の荷重(重量)」を支える必要があります。

そのため、2階の床を支える端部には、柱を入れる必要があります。

新建築紀行
茨城の家:断面図(新建築紀行)

いくつかの「有機的ヴォイド」がデザインテーマの茨城の家。

そのヴォイドの部分に梁を掛けて、しっかりした構造を作ることも一案でしたが、

Yoshitaka Uchino

この時は、「白いヴォイド」を
実現するために・・・

Yoshitaka Uchino

ヴォイドには梁を掛けない
方針にしました。

「リビング内部に柱一本」で考えると、梁を大型にすれば構造は成り立ちます。

一方で、その場合は梁が大きくなり、集成材が増えるとコストが大分上がります。

材積が大きくなり、大きなサイズの集成材は通常の木材よりも高額になる傾向があります。

Yoshitaka Uchino

梁が大きくなりすぎると、
2階の床の厚さが大きくなる・・・

Yoshitaka Uchino

それは木造構造としては、
やや不合理で、建築のボリュームが大きくなる

Yoshitaka Uchino

できるだけ、
もう少し梁を小さくしたい・・・

「こちらを取ると、もう一方がうまくゆかない」という状況が続き、悩みました。

「どちらも取りたい・実現したい」と考えても、うまくゆかないことが世の中多いですね。

Yoshitaka Uchino

出来るだけ、梁もサイズを揃えて、
シンプルな構造にしたい・・・

模型を見ながら、色々と考えました。

デザイン性高める柱の位置と構造的合理性

茨城の家:軸組模型(新建築紀行)

色々悩みながら、構造設計者と様々相談します。

Yoshitaka Uchino

この広いリビングを
少ない柱でシンプルな構造で作りたいのですが・・・

構造設計者T

この辺りに柱をもう一本入れるのは
どうでしょうか?

この辺りに柱が
一本あると大分違いそうですね・・・

構造設計者T

例えば、この位置に
柱を入れれば、周辺の梁の負担が大分減ります。

そこで、「柱をもう一本追加」する方向で、デザインを考えました。

柱を入れる位置は、デザイン上とても大事です。

デザインに活かせるよう位置に、
柱を入れたい。

このリビングの一角には、和室を作りました。

この「小さな和室の設置」は、

依頼者

小さくても良いので、
和室が欲しいです!

建主の希望でした。

そして、広いリビングに「少し床レベルが上がった和室」を作りました。

茨城の家:模型(新建築紀行)

建主の要望を叶えるとともに、この小さな和室によって空間を異化することを意図したのです。

この建築のデザインテーマは「様々な吹き抜けから、変化する自然の光をすくいとる」です。

吹き抜けの一つは、「北側の優しい光を、さらに砕いて、柔らかな光を1階に届ける」役割を持ちます。

この「北側の優しい光」を受け取る1階のリビングには、日本的空間の象徴である和室が最適でした。

和室の角に柱を入れると、リビングの中の和室の空間に象徴性が生まれます。

Yoshitaka Uchino

和室の一角に柱を入れて、
デザイン性を高めたい。

そして、床のレベルを少し上げている和室の空間がキリッとするような印象がありました。

新建築紀行
茨城の家:パースペクティブ(新建築紀行)

こう考えて、和室の角に柱を立てることを考えました。

次回は上記リンクです。

新建築紀行

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