木造建築の合理的設計と適切なコスト管理〜材積と建築コスト・シンプルな構造とコストダウン〜|コストダウンのアイデア3・東京の建築設計

前回は「建築設計におけるコストダウンのポイント〜地震力と建物の重量・鉄筋コンクリート造の弱点・鉄筋コンクリート造の強み・木造・鉄骨造との比較・合理的な木造の弱点とその克服・耐火性能アップ〜」の話でした。

目次

木造建築の合理的設計と適切なコスト管理

茨城の家:軸組模型(新建築紀行)

今回は、木造新築の構造を合理的に設計する話です。

茨城の家を例に、木造軸組構造の合理的設計を考えます。

この家は、私たちの最初の作品です。

詰めが甘いところがありますが、たくさんの模型を作成して、図面をしっかり描きました。

初めての経験がたくさんあった現場監理は、今では良い思い出です。

茨城の家:軸組模型(新建築紀行)

茨城の家は、1階の広いリビングに建てる柱を2本に限定し、合理的に設計することを考えました。

構造設計の専門家の方に、構造設計を依頼しました。

構造設計者T

これは、かなり柱スパンが跳んでいるから、
梁が大きくなるね。

Yoshitaka Uchino

出来るだけ梁のサイズを
小さくして、揃えたいです。

シンプルなデザインにするために、「梁のサイズを揃える」ことを考えました。

そして、デザインをシンプルにすると、

Yoshitaka Uchino

工事費のコストダウンに
つながります。

茨城の家:断面図(新建築紀行)

断面図では「梁が表現されない」描き方があります。

矩計図・詳細図などでは梁の形がくっきりと表現されます。

そのため、「梁のサイズがバラバラ」だと、図面が美しくならない傾向があります。

「美しくない」図面は、そのまま建築のデザイン・コストにも影響します。

Yoshitaka Uchino

出来るだけ、シンプルで
美しい構造にしたい!

「出来るだけシンプルな構造」を考えて設計しました。

材積と建築コスト

茨城の家:上棟(新建築紀行)

木造の構造のコストは、基本的には材積という「木材の体積」によります。

「使用する木材=材積」が多いほど、コストがかかります。

近年、大きく発達した集成材を使用することもあります。

無垢の材料に比べて、品質が安定し強度が強い集成材は、頑丈な構造をつくるには最適です。

ところが、コストが上がります。

茨城の家:軸組模型

合理的設計によってコストを下げるためには、出来るだけ集成材ではなく、一般的な木材の方が良いです。

また、大規模建築である場合を除いて、継ぎ接ぎしている集成材は、少し質感が異なります。

集成材は、どうしても無垢材よりも少し「加工された感じ」が出ます。

大規模建築を除いた理由は、大規模建築の場合は、柱・梁共に大型になるので、多くを集成材にせざるを得ないからです。

柱を「あらわし(露出)」にする場合は、出来るだけ無垢材にしたいです。

木造建築では、柱は3寸5分(105mm)角と4寸(120mm)角が一般的です。

4寸角の方が頑丈なのですが、個人邸等の規模の木造建築ならば、3寸5分の柱でも頑丈に作れます。

シンプルな構造とコストダウン

茨城の家:軸組模型(新建築紀行)

首都圏の古い木造建築は、3寸5分角の柱でつくられていることが多いです。

また、地方は大黒柱などの大きな柱を好む傾向が強かったため、4寸角の柱がほとんどです。

場合によっては、5寸(150mm)、6寸(180mm)角の柱も、珍しくありません。

茨城の家では、4寸角の柱にしました。

Yoshitaka Uchino

合理的でシンプルな
構造にしたい!

構造設計者T

シンプルになるように
考えましょう!

構造設計者と色々と相談します。

この頃は、まだ建築工事の費用やコストに関する知識は少なかったのですが、

Yoshitaka Uchino

シンプルな構造の方が、
工事監理・管理が楽なはず!

Yoshitaka Uchino

すると、工事費も多少は
下がるのではないだろうか・・・

工事費も重視して設計を進めました。

木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造、いずれの場合も「シンプルで合理的な構造」が大事です。

「シンプルで合理的な構造」は、コンセプトが明快でデザイン性が高まり、コストダウンにも繋がります。

こうして模型を眺めたり、詳細な図面を描きながら、構造設計を詰めてゆきました。

建築設計を依頼する方は、設計者の方に「シンプルで合理的」なデザインを依頼すると良いでしょう。

次回は上記リンクです。

新建築紀行

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