前回は「建築設計におけるコストダウンのポイント〜地震力と建物の重量・鉄筋コンクリート造の弱点・鉄筋コンクリート造の強み・木造・鉄骨造との比較・合理的な木造の弱点とその克服・耐火性能アップ〜」の話でした。
木造建築の合理的設計と適切なコスト管理
今回は、木造新築の構造を合理的に設計する話です。
茨城の家を例に、木造軸組構造の合理的設計を考えます。
この家は、私たちの最初の作品です。
詰めが甘いところがありますが、たくさんの模型を作成して、図面をしっかり描きました。
初めての経験がたくさんあった現場監理は、今では良い思い出です。
茨城の家は、1階の広いリビングに建てる柱を2本に限定し、合理的に設計することを考えました。
構造設計の専門家の方に、構造設計を依頼しました。
これは、かなり柱スパンが跳んでいるから、
梁が大きくなるね。
出来るだけ梁のサイズを
小さくして、揃えたいです。
シンプルなデザインにするために、「梁のサイズを揃える」ことを考えました。
そして、デザインをシンプルにすると、
工事費のコストダウンに
つながります。
断面図では「梁が表現されない」描き方があります。
矩計図・詳細図などでは梁の形がくっきりと表現されます。
そのため、「梁のサイズがバラバラ」だと、図面が美しくならない傾向があります。
「美しくない」図面は、そのまま建築のデザイン・コストにも影響します。
出来るだけ、シンプルで
美しい構造にしたい!
「出来るだけシンプルな構造」を考えて設計しました。
材積と建築コスト
木造の構造のコストは、基本的には材積という「木材の体積」によります。
「使用する木材=材積」が多いほど、コストがかかります。
近年、大きく発達した集成材を使用することもあります。
無垢の材料に比べて、品質が安定し強度が強い集成材は、頑丈な構造をつくるには最適です。
ところが、コストが上がります。
合理的設計によってコストを下げるためには、出来るだけ集成材ではなく、一般的な木材の方が良いです。
また、大規模建築である場合を除いて、継ぎ接ぎしている集成材は、少し質感が異なります。
集成材は、どうしても無垢材よりも少し「加工された感じ」が出ます。
大規模建築を除いた理由は、大規模建築の場合は、柱・梁共に大型になるので、多くを集成材にせざるを得ないからです。
柱を「あらわし(露出)」にする場合は、出来るだけ無垢材にしたいです。
木造建築では、柱は3寸5分(105mm)角と4寸(120mm)角が一般的です。
4寸角の方が頑丈なのですが、個人邸等の規模の木造建築ならば、3寸5分の柱でも頑丈に作れます。
シンプルな構造とコストダウン
首都圏の古い木造建築は、3寸5分角の柱でつくられていることが多いです。
また、地方は大黒柱などの大きな柱を好む傾向が強かったため、4寸角の柱がほとんどです。
場合によっては、5寸(150mm)、6寸(180mm)角の柱も、珍しくありません。
茨城の家では、4寸角の柱にしました。
合理的でシンプルな
構造にしたい!
シンプルになるように
考えましょう!
構造設計者と色々と相談します。
この頃は、まだ建築工事の費用やコストに関する知識は少なかったのですが、
シンプルな構造の方が、
工事監理・管理が楽なはず!
すると、工事費も多少は
下がるのではないだろうか・・・
工事費も重視して設計を進めました。
木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造、いずれの場合も「シンプルで合理的な構造」が大事です。
「シンプルで合理的な構造」は、コンセプトが明快でデザイン性が高まり、コストダウンにも繋がります。
こうして模型を眺めたり、詳細な図面を描きながら、構造設計を詰めてゆきました。
建築設計を依頼する方は、設計者の方に「シンプルで合理的」なデザインを依頼すると良いでしょう。
次回は上記リンクです。