前回は「幼稚園リノベーションの耐震改修・設計プロセス②〜既存建物の耐震改修設計・大事な現状把握・園の生活を考慮したベストなデザイン・分厚い耐震壁を設置する位置〜」の話でした。
幼稚園リノベーションの設計プロセス①
耐震基準が古い(旧耐震基準)の建物のため、耐震性能が低かった幼稚園の建物。
・建物の耐震強度の大幅な改善
・老朽化して暗いトイレなどをリノベーション
耐震改修を行い、そのプロセスでリノベーションして園の雰囲気を一新することが求められました。
・園児達の安全に少しでも影響がないようにしたい
・園児達が、工事の粉塵などを吸うリスクはなくしたい
みそら幼稚園リノベーションでは、耐震改修の最重要ポイントがありました。
鉄筋コンクリート造の建物では、耐震改修の際に「耐震壁を追加」する必要があることが多いです。
みそら幼稚園の構造設計において、構造設計者と協議します。
構造設計社と共に現地調査を行った後、現状の把握と解析をお願いしました。
まずは、現状の耐震性能の把握と
耐震補強の方針をご検討ください。
現状はハッキリ把握できたので、
構造ソフトに現状の構造を入力して検討します。
そして、10日ほど後に、構造設計者から連絡があり、構造設計の方針を決める打ち合わせを行いました。
詳細に構造設計を検討しましたが、
耐震壁を追加する必要があります。
なんとか、耐震壁追加なしで
耐震改修できませんか?
一部の柱を分厚くするなどの
案も検討しましたが・・・
どうしても、X方向の耐震性が
確保できないので、1箇所耐震壁が必要です。
「耐震壁の追加」は出来るだけ避けたかったですが、「耐震性能アップ」にはどうしても必要です。
「ぶ厚い鉄筋コンクリートの壁=耐震壁」を
どこに配置するか・・・
それが設計上、
非常に大事でした。
どこに耐震壁を設置するか:綿密な設計
園児たちの環境を考えると「出来るだけ壁を少なくして、自然の光や眺望を妨げないようにしたい」です。
構造設計者と相談しました。
出来るだけ大きな耐震壁を追加せずに、
必要な耐震強度を確保出来ませんか?
「出来るだけ耐震壁を小さくして構造設計」を検討するように依頼しました。
色々と検討しましたが、
最低限の耐震壁を追加しなければ・・・
耐震性向上は難しい状況で、
X方向には1スパンの耐震壁が必要です。
このような回答を、構造設計担当者から頂きました。
どこかに新設しなければならない耐震壁。
ここで「どこに耐震壁を設置するか」が大きな課題でした。
既存の壁面を耐震壁に変える発想:出来るだけ避けたい壁面設置
鉄筋コンクリート造においては、柱と梁だけで必要な耐震強度を確保する構造形式もあります。
既存の構造を改修する上では、それは不可能だったのです。
そこで、コンクリートの壁を追加する場所を、図面と模型を使って、様々シミュレーションしました。
その結果「コンクリートの壁を追加する最も良い場所」を考えて、幼稚園の園長先生にご提案しました。
それは「現在ある壁を一度取り壊して、
延ばして耐震壁にする」ことです。
「壁が増えない」ので
最も良いですね。
小さな子どもたちが過ごす幼稚園や保育園では、「子どもたちを見守る」ことが最も大事なことです。
そのため、「子どもたちが見える範囲が狭くなる」可能性がある壁面の設置は、出来る限り避ける必要があります。
既存の壁面がある位置なら、
壁が増えないから、ベストだね。
この案なら、
先生方も安心だと思います。
模型をつくって検証し、設計案に自信をもって園長先生たちにご提案したのでした。
次回は上記リンクです。
完成写真は、下記からご覧ください。