前回は「戸建住宅リノベーション階段の位置変更と構造〜跳ね出し階段とベンチ・シンプルな木の跳ねだし階段・てこの原理〜」の話でした。
リノベーションの現場塗装とサンプル:サンプルを見て検討
いよいよ内部造作工事が、本格化します。
今回は、塗装の話です。
本来、塗装は工程の最後です。
工事中に塗装すると汚れてしまう可能性があることと、様々な器具等があると塗装工事を実施しにくい状況だからです。
デザインコンセプトのテーマとなる梁の仕上げは、重要なポイントです。
梁と柱を、建主希望の「黒に近い茶色」で塗装することになりました。
古民家の古色の
イメージですね。
「塗装は最後」が基本ですが、棟梁と相談して工程の段取り上、梁だけ早めに塗装します。
塗装する時は、カタログだけでなく、必ず実物のサンプルを取ります。
印刷物と実物では、見え方が違います。
やはり実際の色は「見て確認する」ことを、
おすすめします。
各メーカーは設計者や工務店の依頼で、実物サンプル作成の対応をしてくれます。
この建築の施工においては、オスモに依頼して8種類の「濃い茶色」のサンプルを用意しました。
オスモの担当者に相談したら、
多めにサンプル作成して
お送りします!
と嬉しい対応をして頂きました。
そして、木材に8種類塗装したサンプルを送ってくれました。
写真はそのうち、4種類の塗装のサンプルです。
こうして実物で見てみると、写真で見ているのとは全く違うイメージになります。
サンプルを建主にもご覧いただき、最終決定しました。
このプロセスでオスモの担当者に相談したら、なんと担当者の方が、
木によって少しテクスチャーが異なるので、
僕(オスモ担当者)が現場行って試し塗りします。
と言ってくれました。
さらに、
無料で
対応させていただきます!
とのことで、現場に来てくれました。
本当に
嬉しいことです。
建主との打ち合わせ:梁にサンプル塗装して比較
現地の梁にも、サンプルから絞った3種類の塗装を少しずつ試し塗りしました。
この色が
デザインに合いそうだ・・・
そして、建主にも現場でご覧いただいて、
この色で
いかがでしょうか。
僕たちが一番オススメな色を推薦しました。
そうねえ・・・
うん。確かに、
オススメの、この色がいいわ。
と、僕たち推薦の色で、塗装の色が最終決定しました。
手間がかかりますが、こうして実際の見え方を塗装前に確認して頂ければ、建主も満足です。
僕たち設計者からしても、最終イメージを固めながら進めてゆけます。
そして、梁の塗装が完了しました。
古い木材と新しい木材の対話
最終イメージに、一気に近づきました。
スリット窓の光もイメージ通り「光をすくい取っている」のが確認できました。
リノベーションの際には、既存の柱や梁は出来るだけ使うようにしています。
昔の家は真壁造りが多いので、柱も梁も欠き取られていることが多いですが、それもまた風情です。
既存の建築に対する敬意をもって、
出来るだけ既存の構造は活かします。
「あるもの活かして、ないものつくる」
ですね。
腐食してしまったり、どうしても構造体力上問題がありそうな場合は、交換して新たな柱や梁にすることもあります。
「古い木材と
新しい木材の対話」です。
階段脇の既存の柱は、大きな問題もなく比較的綺麗だったので、そのまま使います。
現在の木造新築では、乾燥材が一般的です。
角柱に背割れ(写真で垂直に欠き取られている部分)を入れることは、ほとんどありません。
昔は、構造材に乾燥材を用いることが少なかったです。
そのため、施工後に少しずつ乾燥が進んだ際、柱が反ったりすることがないように、背割れを入れていることが多いです。
今では丸柱等を除いて、ほとんど見かけることのない背割れ。
この「柱の背割れ」は、古い木造住宅ではよく見かけることがあります。
それもまた風情ですし、
リノベーションらしいですね。
次回は、跳ねだし階段を作る話です。
竣工写真は、下記サイトをご覧下さい。