前回は「練馬の家 12〜跳ね出し階段をつくろう〜」の話でした。
いよいよ内部造作工事が、本格化します。
今回は塗装の話です。
本来、塗装は工程の最後です。
工事中に塗装すると汚れてしまう可能性があることと、様々な器具等があると塗装工事を実施しにくい状況だからです。
コンセプトとなる梁や柱を、建主希望の「黒に近い茶色」で塗装することになりました。

古民家の古色のイメージですね。
「塗装は最後」が基本ですが、棟梁と相談して工程の段取り上、梁だけ早めに塗装します。


塗装する時は、カタログだけでなく必ず実物のサンプルを取りましょう。
印刷物と実物では、見え方が違います。



やはり実際の色は「見て確認する」ことを、
おすすめします。
各メーカーは設計者や工務店の依頼で、実物サンプル作成の対応をしてくれます。
この建築の施工においては、オスモに依頼して8種類の「濃い茶色」のサンプルを用意しました。
オスモの担当者に相談したら、木材に8種類塗装したサンプルを送ってくれました。


写真はそのうち、4種類の塗装のサンプルです。
こうして実物で見てみると、写真で見ているのとは全く違うイメージになります。
サンプルを建主にもご覧いただき、最終決定しました。
このプロセスで、オスモの担当者に相談したら、なんと担当者が
木によって少しテクスチャーが異なるので、
僕(オスモ担当者)が現場行って試し塗りします。
と言ってくれました。
しかも
無料で対応させていただきます!
とのことで、現場に来てくれました。



本当に嬉しいことです。
現地の梁にも、サンプルから絞った3種類の塗装を少しずつ試し塗りしました。
そして、建主にも現場でご覧いただいて、
この色がいいわ。
と塗装の色を最終決定です。
手間がかかりますが、こうして、実際の見え方を、塗装前に確認して頂ければ、建主様も満足です。
そして、僕たち設計者からしても、最終イメージを固めながら進めてゆけます。
そして、梁の塗装をしました。


最終イメージに、一気に近づきました。
スリット窓の光もイメージ通り「光をすくい取っている」のが確認できました。
リノベーションの際には、既存の柱や梁は出来るだけ使うようにしています。
昔の家は真壁造りが多いので、柱も梁も欠き取られていることが多いですが、それもまた風情です。



既存の建築に対する敬意をもって、
出来るだけ既存の構造は活かしましょう。



「あるもの活かして、ないものつくる」ですね。
腐食してしまったり、どうしても構造体力上問題がありそうな場合は、交換して新たな柱や梁にすることもあります。



「古い木材と新しい木材の対話」です。


階段脇の既存の柱は、大きな問題もなく比較的綺麗だったので、そのまま使います。
現在の木造新築では、乾燥材が一般的です。
角柱に背割れ(写真で垂直に欠き取られている部分)を入れることは、ほとんどありません。
しかし、昔は構造材に乾燥材を用いることが少なかったです。
そのため、施工後に少しずつ乾燥が進んだ際、柱が反ったりすることがないように、背割れを入れていることが多いです。
今では丸柱等を除いて、ほとんど見かけることのない背割れがあることがあります。



それもまた風情ですし、
リノベーションらしいですね。
次回は、跳ねだし階段を作る話です。
竣工写真は、下記サイトをご覧下さい。