前回は「周辺環境と一体化する科学実験施設〜大地の皮膜の屋根・自然に包まれた開放的空間〜」の話でした。
設計プロセスにおけるコンセプト・ドローイング

自然豊かな計画地における科学実験施設のデザインは、

周辺の自然を活かして、
建築と融合させるコンセプトです。
「自然との共生」をコンセプトとしている建築は多く見かけますが、より踏み込んだ「強い共生」を考えました。
・揺らめく自然
・有機的ヴォイド
・道空間
・都市広場
・多様なる共生
私たちのデザインは「形から」ではなく、上記5つのコンセプト・フィロソフィーから出発します。
今回は、「多様なる共生」を強く意識したデザインを考えました。
設計を進めてゆく過程では、スタディ模型を多数作成します。
コンセプト模型に関する話を、上記リンクでご紹介しています。
そして、コンセプトを明確にするためには、コンセプト・ドローイングを重視しています。
設計のプロセスにおいて、コンセプト模型を作成することは多いですが、



設計中にコンセプト・ドローイングを
作成する設計者は少数派と考えます。
かつて、私たちもコンセプト・ドローイングは、竣工後に作成していました。
設計中のコンセプトやアイデアは、「頭の中にある」ので、コンセプト・ドローイングの作成はしませんでした。
現実的には、設計業務では法規制・コスト・建主の要望等による変更などで、追い立てられる傾向があり、



なかなか、落ち着いて
コンセプト・ドローイングを作成する時間はないのが現実です。
一方で、コンセプト・ドローイングを作成することで、コンセプトがより具体的になることに気づき、



ある時期から、設計プロセスにおいて、
コンセプト・ドローイングを作成するようになりました。
「大地が屋根へ変容」を示すシンプルなドローイング:デザインの深化


このデザインでは、「大地が屋根に変容する」ことが最も重要なコンセプトです。



大地からフワリと
屋根が生まれるイメージです。


フワリと浮かんだ屋根に対して、床面は科学実験施設らしいホワイトな石で仕上げます。


フワリと浮かんだ屋根は、小規模であればシェル構造などで自立できますが、大規模なので、



柱と壁面で
シンプルに支える構造です。


鉛直荷重だけならば、スチールの柱だけで十分ですが、地震力の抵抗を考えて、コンクリートの壁で支えます。
そして、このコンクリート打ち放しの壁面は、建築に貫入するように配置し、



自然とコンクリートの
素材の対比を生み出すことを目論みました。
「大地が屋根へ変容」するコンセプトを最も端的に、シンプルに表現したドローイングです。
このコンセプト・ドローイングを作成するプロセスにおいて、コンセプトが進化・深化してゆきました。
それに伴って、デザインもまた進化・深化してゆきます。
コンセプト模型も大事ですが、透過させるなどが自由なコンセプト・ドローイングは、



設計プロセスにおいて、
非常に重要なポイントと考えます。
今後も、設計プロセスにおいて、コンセプト・ドローイングを作成してゆこうと思います。