街にそびえ立つシンボル・小田原城〜天守閣へのヴィスタと街づくり・構造ではなく化粧材の「表層的な仕上げ」の石たち〜|小田原城1・建築設計と旅と歴史

前回は「軸組建築の風合いが美しい松本城〜築430年余りの木造建築・平成復元の太鼓門〜」の話でした。

目次

街にそびえ立つシンボル・小田原城:天守閣へのヴィスタと街づくり

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小田原城(新建築未来紀行)

今年2025年、花見の時期を間近に控えた3月下旬に、久しぶりに小田原城を訪問しました。

小田原駅から出ると、小田原城の天守閣が見え、「小田原城中心の街」であることが分かります。

小田原城天守閣に向かって、「お城通り」があり、小田原城へのヴィスタが構成されています。

欧米の都市などと比較して、「無計画」「無秩序」と表現されることが多い、我が国の都市。

ここ小田原では、1960年に再建された小田原城を中心とする街づくりが行われました。

戦後15年で再建された「天下の小田原城」に対する、小田原市民の思いが強く感じられます。

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小田原城(新建築未来紀行)

「お城通り」で建築された飲食店や物販店は、木造建築らしさを前面に出しています。

Yoshitaka Uchino

小田原城に向かうヴィスタに
沿って歩きながら、木の建築を見るのは心地よいです。

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小田原城(新建築未来紀行)

「お城通り」付近の路面には、小田原城から「北条帝国」を築いた北条家の家紋が印字されています。

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歴代北条家当主:左上から時計回りに、北条早雲、北条氏綱、北条氏政、北条氏康(Wikipedia)

戦国期において、少し地味な存在の北条家ですが、かつては関東一円の大帝国を築き上げました。

構造ではなく化粧材の「表層的な仕上げ」の石たち

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小田原城(新建築未来紀行)

小田原駅から、お城通りを通って、小田原城へ向かうと、広大な堀が見えてきます。

日本各地にある城の中でも、かなり堀の幅が大きいのが印象的です。

さらに、小田原駅という大規模な駅がある街の中心部にあるにしては、トップレベルの堀の大きさです。

堀では多数の鯉が、気持ち良さそうに泳いでいました。

先ほど、小田原市にそびえ立つように見えた小田原城天守閣は、一度見えなくなりました。

上の写真の位置からは、ちょうど大きな樹木によって天守閣への眺望が遮られていると思われます。

Yoshitaka Uchino

一度、天守閣が視野から消えることで、
天守閣へのワクワク感があります。

このように「一度天守閣が見えない様にする」のは、天守閣や堀や樹木の配置計画に強い配慮が伺えます。

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小田原城(新建築未来紀行)

もう少し堀に沿って歩いてゆくと、小田原城の正門の方に来ました。

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小田原城(新建築未来紀行)

いよいよ小田原城の正門です。

小田原城は、鉄筋コンクリート造による完全再建です。

かつては、「大規模木造建築」であった小田原城。

現在は鉄筋コンクリート造であるため、「独特の風合い」はほとんど感じられません。

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松本城(新建築未来紀行)

現存十二天守の一つの松本城の石垣と比較すると、小田原城の石垣は「貼った感じ」が強いです。

石が構造体として生きてなく、あくまで化粧材として扱われているのが、明瞭に見て取れます。

この点では、建築や歴史の視点から見て、少し寂しい点があります。

それでも、現在においても、巨大な城郭を楽しめる小田原城は貴重な存在です。

次回は、小田原城内部に入ってゆきます。

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