木材の強い生命力が感じられる犬山城の梁〜統一感ある木材の素材感・空間の秩序と素材・柔構造と剛構造〜|犬山城4・建築設計と旅と歴史

前回は「無骨な木造軸組建築の犬山城〜木造建築を支える石垣基礎・無骨で美しい木の模型〜」の話でした。

目次

統一感ある木材の素材感:空間の秩序と素材

New Architectural Voyage
犬山城(新建築未来紀行)

愛知県と岐阜県の両県を結ぶ、大きな川である木曽川のほとりに建つ犬山城。

New Architectural Voyage
犬山城(新建築未来紀行)

その天守閣内部は、古来からの木造軸組構法による巨大な木造空間が広がります。

天守が国宝指定の五城

・姫路城(兵庫県姫路市)

・彦根城(滋賀県彦根市)

・犬山城(愛知県犬山市)

・松江城(島根県松江市)

・松本城(長野県松本市)

日本国内で五つしかない「国宝指定」天守の一つである犬山城。

姫路城や彦根城のような豪華さは、やや欠けますが「無骨な雰囲気」がとても良いです。

New Architectural Voyage
犬山城(新建築未来紀行)

代々の犬山城主や家老たちが座していたと思われる、畳の間も残されています。

この畳の空間もまた、大きな柱と梁によって支えられており、

Yoshitaka Uchino

建具や棚なども、同じ材料、または
同一の塗装です。

Yoshitaka Uchino

木材、漆喰、畳の三種の材料のうち、
木材を統一することで、空間にメリハリがあります。

素材感は、あまり多くせずに限定する方が空間に秩序が生まれます。

この広間は、統一感ある無骨なデザインによって、茶室のような深遠な空間でした。

木材の強い生命力が感じられる犬山城の梁:柔構造と剛構造

New Architectural Voyage
犬山城(新建築未来紀行)

続いて天守閣を上がってゆくと、少しずつ空間が狭くなってゆきます。

そして、柱と梁があらわしで組まれた空間に出会います。

新建築紀行
豊島の家:金物工事(新建築紀行)

現代の木造建築では、接合部などに多数の金物が使用されています。

金物を使用した方が頑丈であることもありますが、金物を使わないと建築基準法に適合しません。

Yoshitaka Uchino

古来からの木造建築は、
継手仕口などで、金物を使わずに組まれています。

これらの「継手仕口」と「金物による構法」を比較すると、後者の方が頑丈です。

一方で、「継手仕口」による「しなやかな接合」は、地震の際のエネルギーを適度に分散します。

Yoshitaka Uchino

「しなやかな構造」は、
柔構造と呼ばれます。

Yoshitaka Uchino

固い・頑丈な構造は、
剛構造と呼ばれます。

「柔構造と剛構造のどちらが良いか?」は、専門家の間でも意見が分かれます。

筆者は、個人的には「柔構造の可能性」を支持しています。

New Architectural Voyage
犬山城(新建築未来紀行)

この木造軸組の空間を見上げると、大きな梁と、屋根を構成する小梁・垂木が見えます。

大きな梁は、現代のように「きれいに製材した」木材ではなく、

Yoshitaka Uchino

少し曲がっていて、
元の木材の個性が現れています。

「きれいな直方体」ではなく、木材らしく、少し曲がったり歪な梁ですが、

Yoshitaka Uchino

木材の
強い生命力を感じます。

木材の強い生命力が感じられ、歴史の奥行きも感じられます。

New Architectural Voyage
犬山城(新建築未来紀行)

1/10の巨大な軸組模型が展示されていました。

天守閣の構造や空間構成が一目でわかる、リアルすぎる軸組模型は、

Yoshitaka Uchino

模型というよりも、
実際の建築に近い存在感があります。

建築好きの方も、歴史好きの方もぜひ、犬山城に行ってみてください。

New Architectural Voyage

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

目次