海辺の美術館のアイデア〜高い公共性を持つ建築・海と一体となる展示空間・海や光の変化がもたらす内部空間の変容〜|アイデア・海辺の美術館1

前回は「「大地が屋根へ変容」を示すシンプルなドローイング〜設計プロセスにおけるコンセプトドローイング・デザインの深化〜」の話でした。

目次

海辺の美術館のアイデア:高い公共性を持つ建築

New Architectural Voyage
海辺の美術館”Cross Organic Walls”(新建築未来紀行)

今回は、海辺の計画地で設計した「海辺の美術館”Cross Organic Walls”」の話です。

風光明媚な計画地における美術館は、単なる美術館の機能を超えた建築にしたいと考えました。

Yoshitaka Uchino

美術を楽しむ空間、を超えた
「高い公共性」を持つ建築を考えました。

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海辺の美術館”Cross Organic Walls”(新建築未来紀行)

通常の建築計画・設計では、「建築のみ」が計画・設計の対象となります。

今回は、美術館と共に、周辺の敷地の計画・設計も求められました。

Yoshitaka Uchino

周辺の計画地も含めた計画なので、
小さな「地区計画」のようなイメージです。

小さな「地区計画」とも言える計画ですが、私たちはさらに踏み込んで「小さな都市計画」と考えました。

デザイン・アイデアの5つのフィロソフィー:YDS

・揺らめく自然

・有機的ヴォイド

・道空間

・都市広場

・多様なる共生

ここで、私たちが考えている5つのフィロソフィーの全てを盛り込みたいと考えました。

最も重視したのは、海辺ならではの環境を活かす「海辺の広場を持つ美術館」を考えました。

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海辺の美術館”Cross Organic Walls”(新建築未来紀行)

海の環境を大事にするためには「海に開いた建築」が望ましく、「海を取り込む」ことがテーマになります。

一方で、美術館の規模が大きく地下空間も限られていたので、ある程度は地上にボリュームが出てくる計画で、

Yoshitaka Uchino

建築によって、海との
関係がどうなるか、を考えました。

都市から海辺への視線を出来るだけ広げるために、ボリュームの一部を取ることを考えました。

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海辺の美術館”Cross Organic Walls”(新建築未来紀行)

美術館もエントランスへは、「海に向かう」イメージでデザインしました。

海と一体となる展示空間:海や光の変化がもたらす内部空間の変容

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海辺の美術館”Cross Organic Walls”(新建築未来紀行)

建築の大きなコンセプトは「大きな壁を放射状に並べて、海に開いた展示空間を生み出す」ことです。

Yoshitaka Uchino

大きなコンクリート打ち放しの壁面で、
空間を形づくり、構造を成り立たせます。

Yoshitaka Uchino

そして、壁と壁の間には
海に大きく開いた、前面サッシュとしました。

「壁面を並べる」デザインは比較的よく見かけますが、このデザインのポイントは「放射状」です。

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海辺の美術館”Cross Organic Walls”(新建築未来紀行)

そして、海に向かって雄大に伸びてゆく空間は、無限の広がりが感じられるでしょう。

海の様相は、季節や時間によって様々変化します。

その「海の様相の変化」を内部空間に取り込み、自然を感じられる内部空間とすると同時に、

Yoshitaka Uchino

海の変化を内部空間に
取り込み、空間に変化をもたらします。

自然の海や光の変化が、内部空間を様々に彩るでしょう。

海辺の計画地である環境を、最大限に活かしたデザインで、建築から都市を活性化することを目論みました。

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海辺の美術館”Cross Organic Walls”(新建築未来紀行)

最上階には、「海に開いたレストラン」を配置しました。

この空間は、放射状に配置された壁面を一体化する「大きな円弧状の壁面」によって作られます。

片側は、大きな壁面で構造を支えて、海側は大きく開いた「視界が無限に広がるレストラン」です。

そして、この「大きな円弧状の壁面」は、放射状に広がる壁面を構造的に接合します。

Yoshitaka Uchino

構造的安定性に
大きく寄与したデザインです。

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海辺の美術館”Cross Organic Walls”(新建築未来紀行)

まるで「海辺に浮かぶ美術館」であるようなイメージで、デザインしました。

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海辺の美術館”Cross Organic Walls”(新建築未来紀行)

夜は一転して、建築が光を海に放ち、海の夜景に新たなイメージを付与するでしょう。

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