前回は「有機的ヴォイドと間の空間〜新旧の空間の対話・新旧の素材の空間と「間」・本棚の世界・小さな宇宙のような「間」の空間〜」の話でした。
「設計のコンセプト・アイデアの根源」の5つのフィロソフィー
私たちが設計する際には、5つのデザイン・アイデアのフィロソフィーを軸に進めます。
・揺らめく自然
・有機的ヴォイド
・道空間
・都市広場
・多様なる共生
これらの5つのアイデアが、私たちにとって等価に重要です。
工業製品と異なり、「一品生産」の典型例とも言われる建築設計。
設計の熟練化に伴い、設計者の考え方が先鋭化されると、コンセプト・アイデアもまた先鋭化されます。
設計を始める前から、コンセプト・アイデアの重要性を考えていました。
建築デザインは、最終的には
「形が最重要」です。
一方で、「形の背景」あるいは
「形を生み出すコンセプト・アイデア」がさらに重要と考えます。
建築設計の際には、「形から入る」考え方と「コンセプト・アイデアから入る」考え方があると思います。
この「設計に対する考え方」には、数学や物理のように「正しい答え」はないのが実情です。
「設計に対する考え方」は、建築家・設計者次第です。
そして、「形を生み出す」プロセスにおいては、それぞれの方の個性による考え方によります。
今回は、私たちが設計を開始した当初から大事にしてきた、フィロソフィーとアイデアの展開の話です。
「揺らめく自然」の展開:茨城の家から蚕糸の森アパートメントへ
私たちの最初の作品である、茨城の家。
この住宅の計画地は、茨城らしい広大な土地で「二階建ての住宅」としては、ほぼ法規制はありません。
最初の設計の実務だったので、
建築基準法の適合性に苦心しました。
実務の前に、様々な設計をしましたが、多くの場合は「法規制は考慮しない」のが「教育上の設計」です。
「法規制は考慮しない」のでは
実務家としては、問題では?
建築基準法に従った建物でなければ、
設計する意味がないのでは?
このような声も聞こえてくるかもしれませんが、「教育上の設計」では、少し異なります。
これは、それぞれの大学・大学院などの考え方や、担当する教員の考え方にもうよります。
「教育上の設計」では、「形やアイデア」が優先され、法規等は考慮しないことが多いです。
そのため、「建築基準法の運用」よりも、「アイデア・コンセプト重視」が「設計教育の軸」となります。
最初の作品で「法規制をあまり意識しなくて良い」のは、運が良かったと思います。
大学院の設計の延長で、
コンセプト・アイデアを軸に考えることが出来ました。
この時は、「揺らめく自然」を最も大事なコンセプトと考えて、有機的ヴォイドを生み出しました。
この最初の作品から15年ほど経過した後、完成したのが蚕糸の森アパートメントです。
都内の集合住宅の設計の際には、建築基準法以外にも様々な条例等に従う必要があります。
そして、建築が大規模になると消防法が重要となり、消防署との折衝が大事になります。
そのため、住宅設計と集合住宅(マンション)・施設等の設計は、全く異なります。
規模が大きくなっても、「軸となるアイデア・コンセプト」を最重視しています。
形に入る前に、必ず「どのようなアイデア・コンセプト」で
進めるか、を決定します。
蚕糸の森アパートメントでは、「揺らめく自然」を具現化する空間をイメージしました。
一方で、規模が大きくなると「具体的イメージに法規制が立ちはだかる」傾向があります。
ここで、一気に具体的イメージを固めた上で、着実に法規制を乗り越えてゆくことが大事です。
集合住宅・施設などの大規模建築の設計に慣れてきたこともあり、
当初から抱いていた
アイデア・コンセプトを貫くことが出来ました。
実務のプロセスにおいては、法規制・コスト・建主の要望など、様々な要素があります。
それらのこと全てに着実に、確実に応えながら、アイデア・コンセプトを貫きたいと考えています。
次回は上記リンクです。