前回は「奥深い歴史を感じる延暦寺〜東塔=現在・西塔=過去・横川=未来・浄土院における掃除地獄・侍真と超長期の修行・崇高な横川の空間〜」の話でした。
荘厳な屋久杉を感じる体験:屋久杉ランド
今回は、屋久島を訪問した時の話をご紹介します。
この時は、鹿児島の中心部から指宿へ回り、船で種子島と屋久島を訪問しました。
親友の家である「熊本の家」を設計したこともあり、九州が急に身近な存在になり、度々訪問しています。
美しい海を「Toppy」という船に乗って、はるばる種子島から到着しました。
「屋久島といえば屋久杉」なので、早速レンタカーに乗って屋久杉ランドに向かいました。
「屋久杉ランド」というので、遊園地みたいなところかと思いましたが、車で結構山を登ります。
こんなに遠いんだ・・・
と思ったのが実感です。
車を運転していると、車道にお猿さんたちが出てきたりして、可愛らしい感じです。
この時は、小さな子どもと一緒でしたが、屋久杉ランドの入り口で、
お子さんが一緒なら、
手短なコースがお勧めです・・・
こう言われたので、ライトなコースを子どもとゆっくり歩きました。
大量の杉と川に
囲まれた絶景の空間です。
子どもも大人も楽しめる散策路:屋久杉の強い生命力
子どもと一緒に歩いてゆくと、たくさんの屋久杉と共に、屋久杉が折れた跡も見られます。
屋久杉に苔がむしていて、荘厳な雰囲気を感じます。
杉が生き物であることは当然ですが、こうして改めて見ると、強い生命力を感じます。
キリッと立っている屋久杉、地面に倒れてしまった屋久杉など、様々な「屋久杉の世界」が味わえます。
日頃、構造材以外でも、国産杉材は結構好きで、フローリングや机や棚にも杉板を使用する事が多いです。
和歌山県熊野市に非常に一生懸命で、品質が高い製材メーカーがあるので、熊野杉の集成材をよく使います。
国産の杉は、品があって、
木の雰囲気がとても好きです。
フローリングは国産桧が好きです。
蚕糸の森アパートメントでは、賃貸住戸にも「無垢の桧フローリングを使用」する試みをしました。
入居者から
温かみがある無垢の木が好評です!
建主からも嬉しいご感想をいただきました。
屋久杉の無垢フローリングなどもあると聞いたので、今後、使用したいと思っています。
見渡す限り杉、杉、杉で、圧倒されるような空間です。
「屋久杉ランド」という名称では、「ランド」からして「テーマパーク」的に感じます。
全く「テーマパーク」ではなく、日本古来の由緒正しい屋久杉を間近で感じられる実に素晴らしい空間です。
風格ある千年杉の歴史:屋久島から日本を見続けて千年
屋久杉ランド内には、大変貴重な千年杉もあります。
雄大な姿の千年杉は、天へ昇ってゆくかのような壮大さを感じます。
文字通り「千年生きてきた」屋久杉です。
千年生きてきた、という
その存在に深淵な雰囲気を感じます。
「千年」とは具体的に何年くらいなのか、なかなか実感できません。
とにかくこれだけ長い期間、生き続けている屋久杉。
千年前と言えば、日本では1023年ころで、鎌倉幕府すらない時代です。
屋久島から日本を見続けて千年以上になる、極めて貴重な樹木です。
豊臣秀吉の時代には、すでに高い名声を持っていた屋久杉。
京都の方広寺建築には、
屋久杉を使え!
「屋久杉の使用」を豊臣秀吉が命令したという話もあります。
当時の物流状況を考えると、屋久島から大きな屋久杉を京都へ送るのは困難があります。
そのため、この話は諸説ありますが、当時屋久島を支配していた島津氏に対して、
大仏本殿のために
調査した木材は残しておくように!
秀吉が命じた記録が残っています。(国土交通省HP)
秀吉の時代から、すでに「高い耐久性を持つ優れた建築材」として、認識されていた屋久杉。
大いなる歴史を感じます。
「仏陀杉」という仏陀にちなんだ杉もあり、その名前通り、樹齢を重ねた杉の表面からは荘厳さを感じます。
結構
楽しいね!
いろいろな杉を見ているのは、子どもにとっても楽しいようです。
「くぐり杉」という、杉が組み合わさって「くぐれる」道もあります。
ちょっと
疲れたよ・・・
ライトコースでしたが、それなりに高低差のある道は、子どもにはちょっと大変かもしれません。
大人にとっては、現物の壮大な屋久杉を前に、
巨大な博物館にいるような
気持ちになります!
地形に沿って、木製の歩道が整備されていて、歩いて楽しい空間です。
私たちの設計では、「歩いて楽しい」道空間をデザインする事が多いです。
蚕糸の森アパートメントでは、共用階段を公園に面した位置に配置して、四季折々の風景を楽しめます。
こうして「自然の道空間」を歩いてみると、
どんなに巧妙にデザインされた道空間は、
自然には遠く及ばないことを実感します。
素晴らしい屋久杉と自然を楽しみながら、この「雄大な道空間」を楽しみました。
将来、集合住宅や幼稚園・保育園などを設計する際に「自然の道空間」での体験を活かしたいと思います。
次回は上記リンクです。