前回は「下水道施設親子見学ツアー・小平ふれあい下水道館〜下水道の現実と歴史を体験・下水と都市と生活・本物の下水道館に入る体験・便利な生活の裏側を知る体験〜」の話でした。
下水道の現実を体験:有明水再生センター
小平ふれあい下水道館で「下水を体感」し、強烈な臭いを実際にかむ体験をしました。
その後、下水道施設親子見学ツアーはバスで有明に移動しました。
「本物の下水」を間近でみる体験をしたあとは、「どのように下水が浄化されるか」を体験します。
小平ふれあい下水管では、「下水の浄化」に関して説明の展示がありました。
沈澱池や反応タンクで「下水を浄化するシステム」の展示を見ましたが、今回は「本物のシステム」を見学します。
そして、小平から有明までバスで一時間ほどかけて移動してきたツアー。
変わったデザインの有明水再生センターですが、
このデザインは、
宇宙船のイメージです。
宇宙船のような楕円形のデザインに、大きな排気口を「エンジンの排気口」に見立てているようです。
猛烈な臭気を放っている下水が大量にやってくるセンターですから、
排気のためのダクト設備など
設備配管が大型で複雑だろう・・・
と思いました。
担当職員の方から、東京都23区の「水再生センター」の担当地区の説明です。
この有明水再生センターでは、「砂町処理区」が担当となり、隅田川と荒川に挟まれたエリアの下水を浄化します。
下水センターの主な施設は、全て地下にあります。
そして、地上は体育館などに解放されている建築です。
地下に入ってゆくと、巨大なダクト・配管が出てきました。
工場などで、大型のダクト・配管を見たことがありますが、
これまで見たダクトの中で、
最も大型のダクトだ・・・
このダクトによって、
下水の臭気をきれいにして、放出しています。
先ほどの建物で、排気口がすごく高い位置にあったのは、
排気を丈夫にするためです。
排気は消臭していますが、出来るだけ
周囲に迷惑を掛けない配慮です。
「宇宙船のデザイン」であった排気口は、「高い位置に配置する」ためでもありました。
少し、
臭いね・・・
説明を受けている場所は、すでに水再生センター内なので、僕たちが歩いている下に大量の下水が流れています。
そのため、少し「下水らしい」臭いが立ち込めてきています。
流れてきた下水たちは、第一沈殿池・反応槽・第二沈殿池を通って、最終処理されて、川などに放流されます。
下水を浄化するシステム:臭いを体感
「第一沈殿池」という、最初に下水ないの汚泥・ゴミを除去する施設にやってきました。
ここで「任務達成率30%」となるイメージです。
こちらは、下水道内の
下水そのままです。
下水そのものが流れてくる第一沈殿池。
もちろん、「臭いも下水と同じ」ですから、結構な臭いです。
この汚れた下水を
この第一沈殿池で浄化します。
この第一沈殿池で、2~3時間かけて下水をゆっくり流し、大部分の汚泥・ゴミが除去されます。
汚泥・ゴミは除去されますが、「下水は下水のまま」で、次の反応槽に進みます。
「微生物たちが大活躍する」反応タンクでは、「微生物を活性化する」ために大量の酸素が送られます。
上の写真は、微生物たちをイメージした小さなビーズに「大量の空気を送り込む」イメージの水槽です。
実際の「反応池」の内部の様子です。
たくさんの泡があるのは、「空気・酸素が送り込まれている」からです。
ここで、微生物たちが下水の様々な細かなゴミなどを食べて、一生懸命浄化します。
ここまでで、おおむね60〜70%程度「下水の浄化処理」が完了しました。
浄化された下水を体験:きれいになった下水の臭いを嗅ぐ体験
反応槽で微生物たちによって浄化された下水は、最後に第二沈殿池に来ます。
この第二沈殿池で処理された下水は、「ほぼ浄化されている」下水です。
この「ほぼ浄化された」下水が上の写真です。
あまり
臭くないね・・・
子どもも「臭いの違い」がハッキリわかるほど、この下水は臭いません。
第二沈殿池を通った水は、
魚も住める水になっています。
実際に、その処理された水を
みなさんにも体験していただきます。
職員の方が、処理された下水ないにポットを入れました。
そして、引き上げて、僕たちに見せてくれることになりました。
さあ、みなさん
実際に間近で臭いを感じてみてください。
まずは、子どもたちから「実際に匂いをかんでみる」と、
もう臭くないから、
大丈夫だね!
僕も臭いをかんでみましたが、
これは、
全然臭わないね。
まったく問題なく、おおむね透明な水です。
実際、この水であれば、東京湾や川に放流しても問題なさそうです。
この下水を
最後に塩素処理して、きれいにして、東京湾に放流します。
そして、この「下水道処理センター」で最終処理された水の中で、熱帯魚たちが生活しています。
あの下水が、
3段階+αの処理で、放流できるほどきれいになるんだね。
ここまで、「おおむね24時間ほど」の時間です。
つまり「約一日で、下水が東京湾に放流できるレベルに浄化される」ということになります。
おそらく下水などの水が流れている配管は、非常に太く、ボルトも大型で数が多かったです。
これらの配管・ダクトなどが
全て大事で、下水の浄化システムを担っているんですね。
マンションなどの集合住宅、幼稚園などの施設、個人邸など、全ての建築から排出される下水。
飲み水である上水も大事ですが、下水はもっと大事かもしれません。
私たちの現代的な生活を支えている「不可欠であり、裏側である」下水道システム。
今回、下水道システムの全容を知り、下水の現実とその浄化システムを体感できたのは、非常に大きな収穫でした。
デザインには、
アイデアやコンセプトが最も重要ですが・・・
今回、子どもたちと一緒に学んだ
下水にも配慮したデザイン・設計をしよう!
と考えました。
建築にとって、血液のような存在である配管などの建築設備。
それら「建築内部の配管」が「建築の外の配管」につながった後の世界を知る、大事な体験をしました。
今回は下水という水に関して考えましたが、電気などに関しても、
SDGsを念頭に、建築設備を活かす
デザインを考えてゆこう!
と、建築設備に配慮し、メンテナンス・環境性能を高めたデザインをしてゆこうと思います。
機会があったら、ぜひ訪問してみてください。