「構造のコア」と構造的安定性によるコストダウン〜梁のサイズを出来るだけ揃える合理的設計・木造建築における柱の存在・空間に秩序与える柱〜|コストダウンのアイデア5・東京の建築設計

前回は「木造建築の合理的設計とコストダウン〜茨城の家の木造軸組・デザイン性高める柱の位置と構造的合理性・広いリビングと少ない柱・有機的ヴォイドと梁〜」の話でした。

目次

木造建築における柱の存在:空間に秩序与える柱

茨城の家:リビング(新建築紀行)

私たちにとって「最初の作品」である茨城の家。

この時は、3間半x4間半の広い1階のリビングに、「柱を出来るだけ少なくする」ことが求められました。

一般的には、

柱は邪魔だから、
少ない方が良い・・・

と考えられる傾向があります。

新建築紀行
大泉学園の家(新建築紀行)

個人邸の大規模リノベーションの作品の「大泉学園の家」。

この作品の最も大きなテーマは、「既存の柱を残す」ことを活かしたデザインです。

もともとは、キッチン・浴室・脱衣室・納戸など小さく分けられていた空間を、広くしました。

この時、もともとあった沢山の柱が空間内に登場しますが、それらの柱をデザイン化しました。

場所によっては、「半間おきに柱が露出」する空間ですが、柱が空間にリズムと秩序を与えています。

柱が空間に
リズム感を与えることを目論みました。

このように、私たちは柱を肯定的に考えますが、

この広いリビングは、
柱を少なくして欲しい・・・

茨城の家では「柱を少なくする」ことが建主の要望でした。

梁のサイズを出来るだけ揃える合理的設計

茨城の家:軸組模型

木造個人邸の柱の断面は、基本的に3寸5分角か4寸角の二種類です。

そして、柱の高さは断面的デザインにもよりますが、同じ高さの部材が多くなります。

一方で、梁はスパンによって梁の断面サイズが大きく変わり、長さも変わります。

軸組のコストは、基本的には木材の量(材積)で決まります。

梁の大きさを出来るだけ揃えた方が、コストダウンになります。

梁せいが大きな、力強い梁で支えることも
可能ですが・・・

特殊なサイズの大型の梁は
少しコストが高くなります。

さらに、最近は集成材の技術が上がり、「強度が高い」集成材によって大スパンを飛ばすことが可能です。

それらの「強度が高い」集成材は、便利ですが、コストがだいぶ上がる傾向があります。

そこで、梁の大きさを出来るだけ揃えて力の流れを分散させると、合理的な設計になります。

茨城の家:軸組模型

この広いリビングには、どうしてもどこかに柱を建てる必要がありました。

そこで、和室の一角に柱を立てて、デザイン性を高めました。

新建築紀行
茨城の家:リビング(新建築紀行)

リビングの一角にある小さな和室の角の柱が、空間を柔らかく分節します。

そして、この柱によってさらに安定した構造にしました。

広いリビングだけど、柱が二本あれば、
比較的梁せい(梁の高さ)が抑えられるはず。

そうですね。これで、梁をある程度
揃えられそうです。

「構造のコア」と構造的安定性によるコストダウン

茨城の家:軸組模型

これで、少しずつ合理的な構造になってきました。

地震力をうまく受けるには、
構造のコアがあれば良いです。

構造のコアをつくって、
構造をより合理的にしよう。

「構造のコア」は、主に鉄筋コンクリート造のオフィスビルなどで考える構造的コンセプトです。

「構造のコア」は、柱・梁・壁などを一部に集約して、がっちりした箱を作ることです。

その「がっちりした箱」によって、地震力を大きく負担します。

そして、他の構造が負担する地震力を小さくするのです。

茨城の家:軸組模型

1階の水回り部分は、小さなスペースに分かれているので、
コアを作りやすいですね。

この部分を構造のコアに
してください。

今回、1階の浴室・脱衣室・トイレを集約して配置し、付近に収納などを配置していました。

小さな空間なので、本来は構造の柱はそれほど必要ではありません。

この部分にあえて柱をたくさん配置して、筋交による耐震壁も作るようにしました。

この水回り部分が、ガッシリとした
コアになりそうだ。

構造のコアが決まり、さらに合理的構造になってきました。

新建築紀行
茨城の家:外観(新建築紀行)

開口・窓は「開けるところは大きく開けて、閉じるところはしっかり閉じる」デザインです。

そして、外周壁には全面的に構造用合板を貼るので、面で構造をしっかり支えます。

今回、構造のコアを1階に配置したことで、外周とコアで構造をがっちり支えるプランになりました。

これで、全体的に力の流れが分散化されて、構造的に安定化してコストダウンにつながりました。

新建築紀行

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