前回は「佐田岬半島先端の地形〜巨大な岩のような地形の半島先端・樹木が鬱蒼と広がる道空間〜」の話でした。
堀に映り込む天守閣が優美な今治城:揺らぐ堀の水面と静謐な水面

先日、久しぶりに今治城を訪問しました。
堀に天守閣などが映り込む優美な姿で有名な今治城は、「日本三代水城」の一つです。
・今治城
・高松城
・中津城
水面に映り込む天守閣は、微妙に揺らぎ続けます。
水面をデザインに活用する建築は多数あり、多くの場合は静謐な水面です。
静謐でありながら、揺らいでいる堀の水面に映り込む天守閣もまた、揺らぎ続けます。

小田原城の堀も広く、建物が映り込んでいます。
小田原城に関する話を、上記リンクでご紹介しています。
小田原城などの堀と比較して、今治城の堀の水は青々と美しさが際立っています。
そして、堀に囲まれた天守閣や城郭が「堀のすぐ近く」にあるため、天守閣が優美に映り込んでいる今治城。
瀬戸内海とつながる今治城の堀:揺らめく水面の理由

建築デザインにおいては、静謐で静止したかのような水面の方が優美さを引き立てます。
それに対して、今治城の堀は「静謐でありながら、静止せず、揺らぎ続けている」点が良いです。
この「揺らぎ続ける水面」のために、天守閣などの映り込む像が生き生きとしています。

このユラユラと揺らいだ感じが、今治城の優美さを引き立てていると考えます。
Yoshitaka Uchino揺らいだ自然の雰囲気が、
建築に動きを与えています。
動くことがなく、固定化している状態が建築です。
それに対して、この「水面の揺らぎ」が今治城の天守閣などの建築に生命感を与えています。
この今治城の堀の水面の揺らぎは、風などによって揺らいでいるだけではない点がポイントです。


実は、今治城の堀はすぐ近くの瀬戸内海と繋がっています。
そして、潮の潮汐によって、瀬戸内海の海水が堀に入ったり出たりしています。
そのため、今治城の堀の水は、海水と堀の水が常に混ざっている、不思議な水となります。
このように「海水と堀の水が混ざり続けている」堀こそ、今治城の特殊性です。


そのため、今治城の堀には、海と川の生き物が同居している貴重な環境となっています。
今治城の堀に映り込む天守閣などの建築の生命感は、これらの生き物たちによって生み出されるものなのでしょう。
次回は、堀に映り込む今治城を別の角度から考えてみます。


