前回は「デザインのアイデア③〜ヒノキテラスの住宅地のデザイン・水路がつなぐ家と家・広がる住民の輪〜」の話でした。
とても役立つ「昔の工事写真」
こんにちは。
リノベーションはまず、解体するまでがドキドキということがあります。
ここに柱が
あるとは思わなかったな・・・
という「想定外のこと」が、たくさんあります。
練馬の家では、元の家の上棟の時の写真が何枚もありました。
こちらが、新築した28年前の
上棟の写真ですが・・・
設計の
役に立ちますか?
30年近く前の「工事中の写真」が残っていることは、比較的珍しいです。
スマホ・デジカメでたくさん写真が撮れる現代と異なり、昭和の頃の写真は全て現像です。
家族写真などは、アルバムに整理されていることが多いですが、工事写真はなかなか残っていません。
これほどしっかりした
写真が残っていると、とても役立ちます!
上棟の際の、木造軸組の全容が分かる写真は、とても貴重です。
これで、柱や梁の位置や
大きさが大体推測できます!
役に立ちそうで
とてもよかったです!
そこで、設計段階から軸組を割と把握できた為スムーズに進められました。
既存建物の軸組を図面化して設計
写真を見ながら、ここの梁は大きいから梁せい(梁の高さ)は300mmだろうな、など想像します。
まずは、調査・写真をもとに、
図面を復元しました。
ここは筋交があるから補強して壁にしよう、
など考えました。
既存建物の調査から、「大体の柱や梁の位置」は推測できますが、写真はとても有効です。
この周辺には、
大きな梁が何本かあるな・・・
それでも、想定外のこともありました。
柱があるとわかっていた場所に柱はあったものの、えぐられている部分が大きいことがあります。
現代は、柱を全面的に壁で覆う「大壁工法」が多いですが、昔は柱を露出する「真壁工法」が多いです。
そのため、真壁工法では、柱に様々な加工が施され、柱を欠いて組み合わせる工事が多かったのです。
そのため、そのまま使うことは出来ない既存柱もありました。
リノベーションでは、可能な限り構造体は活かしたいという思いがあります。
臨機応変に、対応しなければならないことも
出てきます。
使えると思った柱を、耐久性を考慮すると「交換する必要がある」こともあります。
テラスをつくる際に木の壁で囲むということにしましたが、元々はブロック塀で囲われていました。
家側から見た時に、ブロック塀の手前に木のルーバーで覆ってつくろうと考えました。
そして、全体的に木の空間になると思い設計しました。
実際は、ブロック塀が積み上げられている途中途中に、
控え壁のブロック塀がありました。
控え壁は支えになっているので、外せないのです。
本来はスッキリした木の壁面としたかったのですが、
控え壁は無くすわけにいかないし、
少し出っぱってしまうな・・・
直交した部分はぼこっと出てしまうことになりました。
それでも、職人さんに同材で綺麗につくっていただき、目立ちすぎず馴染む仕上がりとなりました。
しっかり現地を見ていても、
気が付かない所もあるんだな。
と思いました。
工事現場で色々と考えるデザイン
階段はデザイン的にも機能的にも何度も検討を重ねた部分でした。
図面上は成り立ち、模型では簡単につくれたとしても、現実は異なります。
本当に作り上げられるのか、期待と不安がありました。
手摺をどう固定するかなども、色々と案を考えました。
工事現場で、工事担当の方と色々と打ち合わせしました。
このように作ると
頑丈になりそうですが・・・
この方向が
良さそうですね!
現場の方のアイデアをもとに、詳細な納まりを検討して図面にしました。
出来上がった階段を、
上り下りした時は・・・
嬉しさと安堵の気持ちで
いっぱいでした!
想定通りに
完成してよかった!
と思いました。
プロジェクトごとに、毎回様々な問題に直面します。
一つ一つ丁寧に解決して、
最終的に納得のいくものに仕上げてゆきます。
思いの詰まった建築が完成した時、
建主に喜んでいただけることは建築家冥利に尽きます。
これからも知識と経験を積み上げていき、より洗練された設計を目指していきます。