建主の「建築への思い」を具体的設計案へ〜難航する消防署との協議・建築設計において非常に重要な消防法・建築確認申請における消防同意〜|クリニック増築計画とプロセス5・東京の建築設計

前回は「大事な建築基準法遵法の姿勢〜困難な増築の建築確認申請・建主=医師の要望と真っ向から対立する消防法・「屋根があれば建築」という建築の定義〜」の話でした。

目次

建築設計において非常に重要な消防法:建築確認申請における消防同意

新建築紀行
東京の街・都市(新建築紀行)

クリニックを経営する「大地震などの非常時に患者を守りたい」という意志の強い思い。

医師A

なんとか、敷地内に
軽油発電機を設置したい・・・

軽油発電機のサイズにもよりますが「軽油」がある以上、危険物となります。

そのため、まずは消防署との協議が必要となります。

全ての建築確認申請において、消防署による「消防同意」が必要です。

New Architectural Voyage
消防車(Wikipedia)

建築・建物を建てると、その中に「人が居住する」ことになるため、消防署としては、

消防署

建物を建てる際には、
我々に相談して頂きたい。

消防署

そして、建築確認申請には
私たち所轄消防署の同意が必要です。

戸建住宅等小規模な建築確認申請では、消防署との事前協議は不要です。

一方で、マンションや幼稚園等比較的規模が大きな建築設計の際には、

Yoshitaka Uchino

消防署との協議は
必須であり、極めて重要です。

消防署との協議は、消防法などの法令が基準になりますが、「所轄消防署の見解」が優先されます。

そのため、「自分自身が消防法等をよく理解している」場合でも、事前協議は必須となります。

大規模な設計の場合は、自治体・建築確認審査機関・消防署と協議する必要があります。

建築設計・計画の際の協議先(比較的大規模)

1.自治体(区・市等)

2.指定建築確認審査機関(法令解釈によっては所轄建築主事・建築審査(指導)課

3.所轄消防署

基本的には、まず自治体と協議を進め、条例等の扱いに関する確認や協議を進めます。

そして、建築設計をスタートしてゆく過程で、様々な建築基準法との適合性が問題になります。

そこで、指定建築確認審査機関や建築審査課等と協議してゆくことになります。

所轄消防署との協議は「並行して行われる」ことが多いですが、多くは「少し後」となります。

全て並行して行うことが望ましいですが、ある程度、設計図がないと消防との協議は進めにくいです。

そのため、消防署との協議は、「ある程度計画が固まり、設計図書が出来てきた頃」に行います。

Yoshitaka Uchino

ただし、大きな計画変更が
発生しないように、事前に調べたり協議することはあります。

「消防法に適合しない」と「適合するように計画変更」する必要が発生します。

そのような事態にはならないように、細心の注意を払いながら設計を進めてゆきます。

建主の「建築への思い」を具体的設計案へ:難航する消防署との協議

新建築紀行
発電機(北越工業)

今回設置する予定の発電機のサイズは、それほど大型のものではありませんでした。

そして、発電機は重量が重いですが「移動可能」です。

「移動可能」であるため、「建築の対象となるかどうか」も考え方によるかもしれません。

今回は、「移動可能」であっても「据え付ける」ため、「建築に該当する」と判断されました。

建築確認の増築・改築・移転申請不要の基準(建築基準法 第6条)

・防火地域及び準防火地域外

・床面積の合計が十平方メートル以内であるとき

さらに、防火地域内における「増築」にあたる可能性があるため、慎重に設計を進めてゆきました。

本来であれば、設計が先で「指定確認検査機関や消防署との協議は後」となります。

今回は、「敷地内に発電機を設置する」計画のため、設計案より「既存の状況への建築」が問題です。

軽油という危険物を伴うことから、今回はまず消防署との協議を進めました。

基本的に、消防署は「危険物設置」に対しては非常に審査が厳しい視線になります。

これは、「消防活動の最前線」に立つ消防隊員の方から見れば、

消防署

軽油等の危険物から
発火して火事になる可能性がある・・・

消防署

火事の原因になりかねない
事象に対して、審査は当然厳しくなる・・・

少量であっても「危険物設置」に対して、厳しい姿勢になるのは当然のことです。

軽油発電機設置に対して、極めて否定的な消防署の姿勢を上記リンクでご紹介しています。

Yoshitaka Uchino

非常時への対応のため、
軽油発電機を設置したいと考えます。

クリニックを経営する医師は「非常時に電気が失われた際に、患者たちを守る」ことを考えていました。

一方で、消防署の視点から見れば、

消防署

このような軽油発電機の
設置は認め難い!

消防署

新築での計画ならば、
まだ良いが・・・

消防署

既存の建物・敷地に「後から設置」となると
全然話が違う!

確かに「新築の際」には、「まっさらな状況での計画」なので、様々なことが詳細に議論できます。

一方で、既存の建物、しかも「少し古い建物」の場合、新築時と状況が異なっていることが多いです。

そのため、「状況を完全に把握」することは、「極めて詳細な調査」をしない限り難しいです。

消防署

やはり、この
発電機設置計画は認められないな・・・

「万が一の際の危険」を重視する消防署に対して、

Yoshitaka Uchino

発電機を「不燃の壁面で囲う」
などの計画ではいかがですか?

消防署

スチールやアルミなどで
壁面を作る計画か・・・

消防署

・・・・・

消防署

ちょっと、上司と
相談してくるから、お待ちください・・・

どうやら、少し可能性が見えてきました。

少し待っていると、

消防署

計画次第では、
「発電機を不燃材で囲う」で認めましょう。

Yoshitaka Uchino

それでは、「不燃材で囲う」計画の
検討を進めて、また協議します。

これで、「計画実施への大事な一歩」が踏み出せました。

「壁で囲う」というのはシンプルですが、発想転換によって法令をクリアする道が開けました。

次に、増築に関する審査を建築指導(審査)課との協議に向かいます。

次回は上記リンクです。

新建築紀行

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