前回は「「光と影が織りなす」空間イメージとドローイング〜公園の自然の上を空中散歩するイメージ〜」の話でした。
制約が多い集合住宅やマンションの設計:建築の経済性とデザイン

広大な公園に面する、非常に恵まれた立地に計画された蚕糸の森アパートメント。
設計者の視線から考えると、胸が踊る気持ちになる計画地でした。
多額の資金が動く建築の現場では、経済性が非常に重要です。
特に集合住宅・マンションでは、建築に投入するコストを早期に、確実に回収する必要があります。
建築設計の現場ではコストが極めて重要であり、その「コストへの目線」が強いのが集合住宅・マンションです。
そのため、どうしても「建築基準法で許容される容積率(床面積)最大のボリューム」の設計を要求されます。
このように「費用対効果の最大化」を目指す場合、設計の自由度はある程度制約を受けることが多いです。
賃貸マンションにおける坪単価合理化の設計に関する話を、上記リンクでご紹介しています。

強い制約の中、
なんとかコンセプトを具現化したいと考えました。
・揺らめく自然
・有機的ヴォイド
・道空間
・都市広場
・多様なる共生
私たちが考えている「デザイン・アイデアの5つのフィロソフィー」の全てを、設計に具現化したいと考えました。
「光と影が織りなす」イメージの具現化:「光と影の回廊」のような階段


設計の早い段階で、上の様に、「目の前の公園の上空を散歩する」イメージを持ちました。


そして、共用廊下を公園側に向けて、公園の空間を建築内部に取り込みました。


公園の自然とともに、自然の光を建築の奥深くまで取り込みたいと考えました。


階段の空間全体を、光と影が広がってゆくイメージです。


階段の空間が、明るい自然光で満たされながら、コンクリート打ち放しの階段が強い影を落とします。


このコンクリート打ち放しの階段によって生み出される影を、綿密に検討して設計を進めました。
こうして、階段のデザインを詰めて行き、最終的にイメージ通りの階段の空間となりました。
「光と影の回廊」のような階段です。