前回は「軸組建築の風合いが美しい松本城〜築430年余りの木造建築・平成復元の太鼓門〜」の話でした。
鉄筋コンクリート造が多い城郭建築:戦国時代に木造で建築した城

堀に浮かぶ優美な天守閣で有名な松本城。
堀は、とても綺麗で、石垣や建物がよく映えています。

同時期に、松本城に近い上田城を訪問しましたが、松本城と上田城の堀の水はだいぶ異なります。

日本では、全国各地で城があり、観光名所として各自治体が強く推しています。
日本の歴史のシンボルでもあり、戦国時代のファンも多いため、城はとても人気です。
実は、多くの城は、戦後に再建された鉄筋コンクリート造です。
上の名古屋城も、鉄筋コンクリート造ですが、2025年6月現在、耐震性の欠陥で天守入城不可です。
元々は、木造で建築されていた城ですが、戦後再建の場合には、鉄筋コンクリートとなった理由。
その理由は様々考えられますが、まずは、城のような大規模建築は鉄筋コンクリートの方が作りやすいことです。
近年、大規模木造の技術が高まり、大きな建物を木造で作ることは可能です。

そもそも、昔は木造で
建てることが出来たのだから・・・



現代の技術ならば、木造で
建てることは当然可能なのでは・・・


例えば、戦国時代は、概ね1550年頃から1615年頃で、400年以上前です。
この400年以上前の時代に「木造で作られた」のが、様々な城郭建築です。
そのため、現代、構造的には、城郭建築を木造で建てることは十分可能です。
骨太な軸組が美しい松本城:建築基準法の「耐火性能」の強い制約


実は、現代において、城郭建築が鉄筋コンクリート造が多い最大の理由は、建築基準法の制約です。
住宅などの小規模建築とは異なり、大規模建築は、耐火性などの安全性を求められることが多いです。



木造だと、
耐火性能はなさそうね・・・
火がつけば、燃えてしまう可能性が高い木造建築には、耐火性能はありません。
その一方で、「耐火性能を持つ木造建築」が様々考えられています。
・柱や梁などを石膏ボード等の耐火性能を持つ材料で覆う
・「燃える」ことを前提に、「一定時間燃えても、構造性能を確保」出来る燃え代設計
上のような考え方によれば、大規模木造建築による城郭建築は、十分可能です。



柱や梁などを石膏ボードで
覆ってしまったら、木造らしくないのでは・・・
柱や梁などを石膏ボードで覆うと、「木造らしさ」は完全に失われます。
そこで、「石膏ボードの上にさらに木材で覆う」ことで、「木材らしさ」を表現することは可能です。



それって、フェイク木造な
感じがするけど・・・



法律の規制があるなら、
仕方ないかもね・・・
確かに、「石膏ボードの上にさらに木材で仕上げ」は、設計者・建築士としては、気が乗らない面があります。
そして、「燃え代」設計でも、城郭建築の木造建築は可能ですが、火災時の安全性に問題があります。
大勢の観光客が訪れる城郭建築では、安全性は最重要です。
そのため、結局は「鉄筋コンクリート造による再建築」が選ばれる傾向があります。


歴史が長い松本城では、様々な城主がいました。


大人気の松本城は、予約しても並ぶので、時間の余裕を持っていただくと良いでしょう。


内部では、美しさを感じさせる「骨太な柱・梁の軸組」が楽しめる松本城。
ぜひ、訪問して見てください。