難航する消防協議を熱意で打開〜「建主の思い」を形に・地下タンクへの極めて厳しい消防署の視点・建築設計と消防法〜|クリニック増築計画とプロセス3・東京の建築設計

前回は「極めて重要な消防署との協議〜建築設計における消防法の影響力・危険物である「軽油」の消防法の扱い・大事な建築設備と様々なタンクの役割〜」の話でした。

目次

地下タンクへの極めて厳しい消防署の視点:建築設計と消防法

増築・発電機設置計画地(新建築紀行)

H医師の「発電機のための軽油地下タンク」をつくるご要望を受け、まずは消防署へ。

地下タンクを計画中ですが、
「少量危険物」に関して、協議お願いします。

どのくらいの
規模ですか?

量は
4,500Lです。

1,000L超えたら
「少量」ではなく、「危険物」です。

本署で
協議してください。

最初は地域の出張所で協議を試みましたが、規模が大きいため、「本署扱い」となりました。

本署へ向かいます。

4,500Lの地下タンクを計画中ですが、
「危険物」に関して、協議お願いします。

計画地は
どちらですか。

H駅前の
ビルの一角です。

増築・発電機設置計画地(新建築紀行)

駅前の
ビルに地下タンク?

消防署の方に驚かれ、怪訝な顔をされました。

駅前の商業地に
地下タンクを新たにつくるの?

それが
建主の要望です。

それは
なんのために?

建主が医師で、
緊急時の発電機用です。

うん・・・
なるほど・・・

「気持ちはわかる」という感じです。

まあ、
しかしねえ・・・

商業地に
地下タンクなんて、聞いたことないよ。

なんだか「不穏な雰囲気」です。

これは
消防署としては、許可できないよ。

なんと「不許可」が言い渡されてしまいました。

こうなっては、困るので僕も一生懸命説明します。

クリニックの
緊急時の発電機用は社会的にも大事かと。

だからね・・・
気持ちはわかるよ。

軽油の地下タンクって、
どういうものか分かる?

正直なところ、「分かっているかどうか」は確信は持てませんが、イメージはできます。

実際、「軽油の地下タンクの設計」をしたことがないですが、

分かりません・・・

プロとして、こうは言えませんので、

初めての経験ですが、
なんとか「建主の希望」は叶えたいと考えます。

と答えます。

とても
危険だよ。

軽油タンクが「危険である」ことくらいは分かりますが、

なんとか
ならないでしょうか。

まあ、
計画次第なのかな・・・

そう言った担当者は、奥に行って、他の方と相談しています。

戻ってきた署の担当者は、

やっぱり「地下タンク」は
絶対に認められない!

はっきり言われてしまいました。

火災などの非常時には自ら出動して、「人命救助」の最前線にたつ消防署の方々。

それだけに「危険物に対する視点」は極めて厳しいのが実情です。

難航する消防協議を熱意で打開:「建主の思い」を形に

発電機(北越工業)

こうなっては、「協議のしようがない」のでやむを得ません。

確かに、「駅前の商業地に軽油地下タンク」は危険そうです。

引火したら、大変なことになりそうです。

では、軽油発電機
設置の計画をご相談したいと思います。

これも
認められない!

なんと「発電機設置」計画自体が否定されてしまいました。

あのね、
発電機だって結構な量の軽油が入っているでしょう。

例えば、60Lの軽油だって
かなり危険なんだよ。

消防署の方に諭されてしまいます。

軽油は僕は身近ではないですが、「60Lのガソリン」ならイメージできます。

マツダ ロードスター(Wikipedia)

ガソリン車であれば、「自動車1台のタンクに詰まっている量」が60Lという量です。

そこをなんとか
前向きに考えて頂きたい。

H医師が「東日本大震災のような大震災への懸念」を口にしていたことを思い出して、

東京で、東日本大震災のような
大震災が起こる可能性があります。

その際に、この医師のように
クリニックに備え付ける「発電機」は非常に価値があるでしょう。

「地域に貢献したい」という
思いを汲んで欲しい。

僕も一生懸命説明すると、

うん・・・・・まあ、計画次第で、
これは認められるかもしれない・・・

これで、なんとか「H医師の思い」を形にできる「ほんの僅かな希望」が持てました。

次回は上記リンクです。

新建築紀行

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