前回は「傾斜面の研究施設と会社のアイデンティティーの具象化〜静謐な「水に包まれた」研究空間・傾斜地を活かした水の流れ〜」の話でした。
水の上に居住空間があるようなコンセプト・ドローイング

傾斜地に建つ、台形断面のデザインの研究施設を設計しました。
研究施設において、各研究者が研究に没頭できる環境を整えたいと考えました。
斜面を活かし、流れる水に身を任せるような心地よい研究のための空間をつくることを目指しました。
今回は、デザインコンセプトを表すコンセプト・ドローイングの話です。

上のコンセプト・ドローイングは、斜面の水面と建築の一体感を表現しています。
各階のスラブは、円柱によって支えられ、あたかも水の上に居住空間があるようなイメージです。

このコンセプト・ドローイングを、パースではなく立面図で表現したドローイングが上です。
パースの方が立体感があって、分かりやすい面があります。
その一方で、上のように立面図の2次元情報にすると、要素が削ぎ落とされ、コンセプトがクリアになります。
デザインを深化させる「2次元と3次元の間の往復」:抽象化と具象化

今度は、線画にしたコンセプト・ドローイングです。
建築部分は、スラブと円柱のみを表現しています。
また、水面を線のみにして抽象化すると、また違った印象となります。

線画のコンセプト・ドローイングのアクソメ図が上の絵です。
このアクソメは正面から見たアクソメで、3次元ではなく2次元的表現で、建築の構成が最も良く表れます。

上は、先ほどのパースのコンセプト・ドローイングにおいて、空を黒にして、抽象度を高めたドローイングです。
デザインにおいて、よく使用される黒背景は、コンセプトを引き立てます。

最後は、断面図のコンセプト・ドローイングです。
水面の深さは、実際よりも薄く表現しています。
コンセプト・ドローイングは、やはり3次元よりも2次元の方が良いと考えます。
3次元と2次元では情報量が全く違い、2次元の「要素を削ぎ落とした表現」の方がクッキリと表現されます。
建築のデザインコンセプトの表現は様々で、コンセプト模型も良いです。
模型も良いですが、コンセプト・ドローイングの方が好きです。
コンセプトはビシッと水平・垂直が取れた方が良いので、ドローイングの方がハッキリするからです。
2次元と3次元の間を行ったり来たりしながら、デザインは深化してゆくと考えます。
次回は上記リンクです。

