前回は「難航する消防協議を熱意で打開〜「建主の思い」を形に・地下タンクへの極めて厳しい消防署の視点・建築設計と消防法〜|クリニック増築計画とプロセス3・東京の建築設計」の話でした。
建主=医師の要望と真っ向から対立する消防法
消防署で「絶対に認めない」と言われてしまった「地下タンク」建築。
まずは、地下タンク建築を要望している建主であるH医師に報告します。
消防署での協議で、
「地下タンク」建築は不可となりました。
えっ、
なんで?
それは、
困る!
気持ちは分かります。
「建築したい」という建主と、「建築不可」の消防署の間に挟まれました。
なんとか
ならないの?
私も、かなり
強く主張しましたが・・・
やはり、
「地下タンク」は非常にハードルが高いです。
なるほど、
そうかあ・・・
とてもガッカリするH医師。
一方で、行政の権限は絶対です。
軽油発電機設置も、
かなり難色を示されています。
えっ、
そうなの?
次々に「自分の希望」に対して「立ちはだかる壁」に対して、
なんで、
こうなるの?
少しイライラした雰囲気のH医師。
気持ちは分かることであり、仕方ありません。
軽油発電機設置は、
私が責任持って、なんとか消防署の了承を得ます。
なんとか
頼むよ!
軽油発電機設置に関しては、
建築審査課との協議も必要です。
えっ、
そうなの?
建築は
関係ないんじゃないの?
発電機という「モノを設置するだけ」は、建築とは無関係に思われる方も多いかもしれません。
「屋根があれば建築」という建築の定義
そもそも建築・建物とは、何かを考えてみましょう。
建築・建物は、いわゆる戸建住宅・マンション・幼稚園などです。
そして、全ての建築・建物は、建築基準法という法律に従う必要があります。
他にも、消防法や各種自治体の条例等にも従う必要がある場合もあります。
他の法規もあるのですが、なんといっても「建築基準法が第一」となります。
建築基準法という法律がある以上、「建築物とは何か?」という定義が必要です。
・土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの
・附属する門若しくは塀、観覧のための工作物
・地下若しくは高架の工作物内に設ける事務所、店舗、興行場、倉庫その他これらに類する施設
・建築設備
少し簡略化していますが、法律の定義は上記のとおりです。
モノであっても、基本的に「屋根があれば建築」となります。
その屋根とは、小さな物置などであっても、建築基準法上「屋根」とみなします。
大事な建築基準法遵法の姿勢:困難な増築の建築確認申請
「物置」や「発電機」であっても、相応の箱である以上は「屋根がある」とみなす建築基準法。
そのため、「物置や発電機などを敷地内に置く」のは、厳密にいうと「増築」に相当します。
物置を
置いただけで、増築?
だって、
建築工事してないけど・・・
こう考える方が多いと思います。
建築基準法では増築申請の基準に関して、下記の通り定めています。
・建築主は、建築物を建築しようとする場合、工事に着手する前に、建築主事の確認を受けなければならない。
建築をするのは、行政の許可である「建築確認」が必要です。
現在は、ほとんどの場合において、民間である指定確認検査機関が行います。
基本的に、事前申請である「建築確認」が必要ですが、下記の場合に限り、増築等は申請不要です。
・防火地域及び準防火地域外
・床面積の合計が十平方メートル以内であるとき
まずは、「防火地域及び準防火地域外」が条件です。
「防火地域」や「準防火地域」は東京23区などの都市部は、ほとんどの場合該当します。
地方都市や街から離れた地域は、対象外となることが多いです。
そして、「床面積の合計が十平方メートル以内」は、だいたい「六畳の部屋」程度以内の面積となります。
つまり、都市部において、敷地内に「六畳のサイズを超える物置」を設置すること。
それには、厳密には「増築申請」が必要です。
ただし、「増築の建築確認申請」は、既存建物の状況次第では、かなりハードルが高いのが現実です。
そのため、六畳以上の「大型の物置」を都市部の敷地内で設置している多くの場合、「未申請」です。
これは厳密には「建築基準法違反」であり、「法律違反」とな重大な事態です。
一方で、この点は行政もわかっていて、あまり問題にはされないのが現実です。
私たちは、
法律遵守の姿勢です。
今回、自治体の建築審査課・消防署の指導次第では、「建築・増築」になる可能性があります。
少しずつ、しっかりと、着実に計画を進めてゆくことにしました。