マンションの建築工事のプロセス〜厳しい建蔽率を逆手に取る設計・都市のヴォイドを生み出すデザイン・建物の高さの基準を決めるレベル設定・建築工事のスタートライン〜|石神井公園の集合住宅2・東京の建築設計

前回は「マンションの建築工事現場の流れ〜設計の前の大事な現地調査・建築基準法と条例のチェック・風致地区の強い規制・地鎮祭・「建築開始!」の強い気持ち〜」の話でした。

目次

厳しい建蔽率を逆手に取る設計:都市のヴォイドを生み出すデザイン

石神井公園の集合住宅:計画地(新建築紀行)

都内有数の大きな公園である石神井公園。

小学生の頃、同級生の友達たちと遊びに来た記憶があります。

広大な樹木が広がる緑豊かな計画地に、マンションを設計することは大変嬉しいことです。

周囲の自然と調和して、
樹木を楽しめる空間をつくりたいな・・・

と考えて、具体的な設計を進めました。

非常に恵まれた計画地ですが、それだけに「非常に大きな制約」がありました。

計画地のエリアは「石神井公園の自然を守るため」の風致地区に指定されていました。

風致地区

・都市の風致(樹林地、水辺地などで構成された良好な自然的景観)を維持する

・良好な自然的景観を形成している区域のうち、土地利用計画上、都市環境の保全を図るため風致の維持が必要な区域

このため、建蔽率が40%とマンション設計にしては「極めて厳しい制約」がありました。

新建築紀行
石神井公園の集合住宅:1F平面図(新建築紀行)

それまでに、設計で終わってしまい工事に至らず「計画案」となったマンションを含めて、10以上設計しました。

非常に厳しい制約を
逆手にとって、中庭をデザインしました。

周囲の自然を建築の内部に取り込む「孟宗竹のある中庭」をつくりました。

新建築紀行
石神井公園の集合住宅:模型(新建築紀行)

この中庭は「都市のヴォイド」となります。

建物の高さの基準を決めるレベル設定

石神井公園の集合住宅:レベル設定(新建築紀行)

地鎮祭が完了し、いよいよ工事に入ります。

今回は、建物の高さを決めるレベル設定の話です。

個人邸の場合は、都内の3階建等以外では、高さ規制が大きな影響を及ぼすことは少ないです。

4階以上の集合住宅では、高さ規制が設計・デザインに非常に大きな影響を持ちます。

高さ規制は、建築基準法による日影規制・北側斜線、条例等による最大高さ等あります。

新建築紀行
石神井公園の集合住宅:断面図(新建築紀行)

いずれの場合も、「高さを測定する基準」として「建築の平均地盤高さ」を設定します。

高さの基準レベルを設定して、「そこから高さを測定する」のです。

この「高さの基準」は建築工事上、非常に重要なポイントです。

建築工事のスタートライン

石神井公園の集合住宅:レベル設定(新建築紀行)

多くの場合は、付近のマンホールの天端を基準とします。

この建築でもマンホールを基準にして、敷地内のレベルを確認してゆきます。

ここで決定する「高さの基準」を基に全ての建物の高さが決定されて、工事が進んでゆきます。

そのため、「後で取り返しのつかない」大事な大事な「建築工事のスタートライン」とも言えるのがレベル基準の決定です。

私たち設計者が、現場監督と一緒に、
慎重にレベルを設定してゆきます。

石神井公園の集合住宅:レベル設定(新建築紀行)

写真右手にあるのは現場事務所です。

現場事務所は、付近のマンションの一室を借りることが多いです。

この計画地はゆとりがあったので、一角にプレハブを建てました。

ここで、これから1年弱の間、現場打ち合わせを進めてゆきます。

次回は、試験杭の話です。

竣工写真は、下記サイトをご覧下さい。

新建築紀行

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